今年の桜
2023年3月28日(火)
東京での開花宣言があった3月14日頃、眼下の公園の桜は
まだまだでした。でも他ではもう咲いてるかも、と思い、一度
ウロウロと歩き回りましたが、一分咲きにもなっていません
でした。数日後から、「菜種梅雨」と言うのでしょうか、雨の
日が続き、その間に桜は一気に満開となりました。
昨日は全国的には好天だったようですが、関東だけどんより
と雲の多いお天気で、今日も同じような予報でしたが、午後に
なると青空も顔を覗かせるようになったので、急ぎ出掛けて
見ました。

眼下の公園の桜。やはり近くで見ると、
春がここに、といった感じがします。

溢れんばかりの花をつけた梢に近づいて。

満開と思われる桜も、足元を見ると
もうこんなに花びらが・・・。先週末は
雨だったので、せめてこの週末まで
散らずにいて欲しいですね。
もう一箇所、昨年は満開時を見逃してしまった気になる
枝垂れ桜のある公園、週末までに足を延ばしてみたいと
思っています。
「世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」
(在原業平)
東京での開花宣言があった3月14日頃、眼下の公園の桜は
まだまだでした。でも他ではもう咲いてるかも、と思い、一度
ウロウロと歩き回りましたが、一分咲きにもなっていません
でした。数日後から、「菜種梅雨」と言うのでしょうか、雨の
日が続き、その間に桜は一気に満開となりました。
昨日は全国的には好天だったようですが、関東だけどんより
と雲の多いお天気で、今日も同じような予報でしたが、午後に
なると青空も顔を覗かせるようになったので、急ぎ出掛けて
見ました。

眼下の公園の桜。やはり近くで見ると、
春がここに、といった感じがします。

溢れんばかりの花をつけた梢に近づいて。

満開と思われる桜も、足元を見ると
もうこんなに花びらが・・・。先週末は
雨だったので、せめてこの週末まで
散らずにいて欲しいですね。
もう一箇所、昨年は満開時を見逃してしまった気になる
枝垂れ桜のある公園、週末までに足を延ばしてみたいと
思っています。
「世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」
(在原業平)
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中の君にとっての最大の課題
2023年3月27日(月) 溝の口「湖月会」(第166回)
ここ数日雨模様の日が続きましたが、今日は青空こそ
見えないものの、雨の心配はなく過ごせました。明日も
関東だけがすっきりしないお天気のようです。桜の花が
満開になってから、どうもお花見日和に恵まれません。
第2金曜クラス同様、このクラスも第49帖「宿木」の後半
に入っています。
夕霧の六の君との結婚によって匂宮の夜離れが続き、
自分の置かれた立場の弱さを思い知らされた中の君は、
薫に直接話がしたいと手紙を送り、至近距離で、薫に
宇治行きを懇願しました。言うなれば、中の君のほうに
薫をつけ入らせる隙があった、ということになりますが、
実際薫に迫られ、それを回避していかねばならなくなった
時、中の君にとっては、夫の夜離れよりも更に辛い課題
を突き付けられる格好となりました。
これが全く面識のない相手なら、きっぱりと突き放すことも
出来るのですが、昔から身内でもないのに、親身に世話を
してもらって来た恩義は、中の君もしっかりと認識しています。
だからと言って、薫を受け入れているような応対をするのも
憚られ、「いかがはすべからむと、よろづに思ひ乱れたまふ」
(どうしたらよいものであろうかと、あれこれと思い乱れなさる)
のでした。
今の中の君には、相談できる人が誰もいないというのも、
辛さを増幅していました。若い気の利いた女房は、新参者
ばかりだし、昔から見知っている女房は、皆年老いていて、
こうした事情を語り合うには不向きでした。となると、恋しく
思い出されるのはいつも亡き大君なのですが、そもそも、
大君がご存命なら、薫が中の君を恋慕するようなことも
なかったはずなので、中の君には何とも悲しくやりきれない
思いが募っておりました。
ただ、この苦悩があって、一人で解決策を見つけ出さねば
ならない状況に置かれたからこそ、中の君は薫に浮舟の
存在を告げる決心がついたのだと思います。本来薫には
知られたくないはずの父親の秘密(認知しなかった隠し子
がいる)を告げざるを得なかった中の君の言動を正当化
するには、くどいまでの過程が必要で、「明石」の巻での
入道の登場のような神の力を借りた手ではない、読者が
現実的に感じられる手を用いるところまで、『源氏物語』
自体が深化していた証しではないでしょうか。
ここ数日雨模様の日が続きましたが、今日は青空こそ
見えないものの、雨の心配はなく過ごせました。明日も
関東だけがすっきりしないお天気のようです。桜の花が
満開になってから、どうもお花見日和に恵まれません。
第2金曜クラス同様、このクラスも第49帖「宿木」の後半
に入っています。
夕霧の六の君との結婚によって匂宮の夜離れが続き、
自分の置かれた立場の弱さを思い知らされた中の君は、
薫に直接話がしたいと手紙を送り、至近距離で、薫に
宇治行きを懇願しました。言うなれば、中の君のほうに
薫をつけ入らせる隙があった、ということになりますが、
実際薫に迫られ、それを回避していかねばならなくなった
時、中の君にとっては、夫の夜離れよりも更に辛い課題
を突き付けられる格好となりました。
これが全く面識のない相手なら、きっぱりと突き放すことも
出来るのですが、昔から身内でもないのに、親身に世話を
してもらって来た恩義は、中の君もしっかりと認識しています。
だからと言って、薫を受け入れているような応対をするのも
憚られ、「いかがはすべからむと、よろづに思ひ乱れたまふ」
(どうしたらよいものであろうかと、あれこれと思い乱れなさる)
のでした。
今の中の君には、相談できる人が誰もいないというのも、
辛さを増幅していました。若い気の利いた女房は、新参者
ばかりだし、昔から見知っている女房は、皆年老いていて、
こうした事情を語り合うには不向きでした。となると、恋しく
思い出されるのはいつも亡き大君なのですが、そもそも、
大君がご存命なら、薫が中の君を恋慕するようなことも
なかったはずなので、中の君には何とも悲しくやりきれない
思いが募っておりました。
ただ、この苦悩があって、一人で解決策を見つけ出さねば
ならない状況に置かれたからこそ、中の君は薫に浮舟の
存在を告げる決心がついたのだと思います。本来薫には
知られたくないはずの父親の秘密(認知しなかった隠し子
がいる)を告げざるを得なかった中の君の言動を正当化
するには、くどいまでの過程が必要で、「明石」の巻での
入道の登場のような神の力を借りた手ではない、読者が
現実的に感じられる手を用いるところまで、『源氏物語』
自体が深化していた証しではないでしょうか。
源氏と入道の娘の「心くらべ」
2023年3月23日(木) オンライン「紫の会・木曜クラス」(第32回・通算79回・№2)
朝から雨が降り止まず、肌寒さを感じる一日となりましたが、
明日はまた最高気温が23度と、5月並みの陽気になるとの
予報です。開花した桜もこの日々乱高下する気温に驚いて
いるのではないでしょうか。
昨日の茶話会に続けて、オンラインが二日続いた方も何人
かおられましたが、今日は講読会で、第3月曜日のクラスと
同じ、第13帖「明石」の真ん中あたりを読み進めました。
入道の話から、その娘との宿縁を感じた源氏は、入道の娘
との結婚を承知し(それについては⇒こちらから)、早速翌日、
娘に求婚の手紙を遣わしました。
源氏に心惹かれながらも、身分の違いを思うと、近づくだけ
みじめな目を見ることになる、と考えている入道の娘は、返事
を書こうともしません。入道の代筆という、常識外れな返事を
受け取った源氏は、さらにその翌日、「私は代筆の手紙など
まだ貰ったことがありません」と言って、再度手紙を贈りました。
娘も父親に無理にせっつかれて、仕方なく筆を取りましたが、
それは都の高貴な女性にも引けをとらないものでした。
源氏も文通相手として満足し、その後は手紙の遣り取りをする
ようになったものの、二人は「心くらべ」(意地の張り合い)の
状態のまま、事はなかなか進展しません。それぞれに、思う
ところがあったからです。
源氏は、腹心の家来の一人・良清が、長年入道の娘に思いを
かけてきたことも知っているので、娘の許に通うようになったら、
自分が横取りした格好になるし、出来ればそれは避けたい、
「人進み参らば、さるかたにてもまぎらはしてむ」(女の方から
進んで仕えるように参上してくれたら、召人にして、うやむや
のうちに事を運んでしまおう)と、相手の出方を窺っているの
でした。
娘は娘で、「なずらひならぬ身のほどの、いみじうかひなけれ
ば」(肩を並べることのできない自分の身分を思うと、何もかも
甲斐の無い気がして)、自分は源氏の今だけの慰め者、言う
なれば「現地妻」で終わってしまう可能性が大で、軽々しく源氏
に靡くようなことは決してするまい、という気位の高さを保って
おりました。
さあこの根競べ、どのような形で決着するのでしょう。それは
来月読むことになります。
本日の記事の全文訳は(⇒こちらから)ご覧くださいませ。
朝から雨が降り止まず、肌寒さを感じる一日となりましたが、
明日はまた最高気温が23度と、5月並みの陽気になるとの
予報です。開花した桜もこの日々乱高下する気温に驚いて
いるのではないでしょうか。
昨日の茶話会に続けて、オンラインが二日続いた方も何人
かおられましたが、今日は講読会で、第3月曜日のクラスと
同じ、第13帖「明石」の真ん中あたりを読み進めました。
入道の話から、その娘との宿縁を感じた源氏は、入道の娘
との結婚を承知し(それについては⇒こちらから)、早速翌日、
娘に求婚の手紙を遣わしました。
源氏に心惹かれながらも、身分の違いを思うと、近づくだけ
みじめな目を見ることになる、と考えている入道の娘は、返事
を書こうともしません。入道の代筆という、常識外れな返事を
受け取った源氏は、さらにその翌日、「私は代筆の手紙など
まだ貰ったことがありません」と言って、再度手紙を贈りました。
娘も父親に無理にせっつかれて、仕方なく筆を取りましたが、
それは都の高貴な女性にも引けをとらないものでした。
源氏も文通相手として満足し、その後は手紙の遣り取りをする
ようになったものの、二人は「心くらべ」(意地の張り合い)の
状態のまま、事はなかなか進展しません。それぞれに、思う
ところがあったからです。
源氏は、腹心の家来の一人・良清が、長年入道の娘に思いを
かけてきたことも知っているので、娘の許に通うようになったら、
自分が横取りした格好になるし、出来ればそれは避けたい、
「人進み参らば、さるかたにてもまぎらはしてむ」(女の方から
進んで仕えるように参上してくれたら、召人にして、うやむや
のうちに事を運んでしまおう)と、相手の出方を窺っているの
でした。
娘は娘で、「なずらひならぬ身のほどの、いみじうかひなけれ
ば」(肩を並べることのできない自分の身分を思うと、何もかも
甲斐の無い気がして)、自分は源氏の今だけの慰め者、言う
なれば「現地妻」で終わってしまう可能性が大で、軽々しく源氏
に靡くようなことは決してするまい、という気位の高さを保って
おりました。
さあこの根競べ、どのような形で決着するのでしょう。それは
来月読むことになります。
本日の記事の全文訳は(⇒こちらから)ご覧くださいませ。
第13帖「明石」の全文訳(8)
2023年3月23日(木) オンライン「紫の会・木曜クラス」(第32回・通算79回・№1)
オンライン「紫の会」は第3月曜日(3/20)に続き、第4木曜日の
今日、同じ個所を講読しました(278頁・13行目~285頁・8行目)。
前半部分の全文訳は3/20に書きましたので(⇒こちらから)、
本日の全文訳は後半部分(282頁・3行目~285頁・8行目)と
なります。
(頁・行数は、「新潮日本古典集成 源氏物語二」による)
入道は、自分の願いがどうやら叶ったという気がして、さっぱりした気分
でいたところ、翌日の昼頃、源氏の君は岡辺に住む入道の娘にお手紙
を遣わされました。娘がこちらが気恥ずかしくなるほどの様子らしい、と
思われるにつけても、却ってこのような人知れぬ所に、意外にも素晴ら
しい女性が住んでいることもありそうだ、と、気をお遣いになって、高麗
の胡桃色の紙に、並々ではなく念を入れて、
「をちこちも知らぬ雲居にながめわびかすめし宿の梢をぞとふ(どこを
目指して良いかもわからず、遥かに噂を聞くばかりなのに思い悩み、
道が少しだけ見えている家の梢を頼りにお手紙を差し上げるのです)
あなたを恋しく思う気持ちに堪えかねまして」
とだけ書いてありましたでしょうか。
入道も、人知れず源氏の君からのお手紙を待ち申し上げて、岡辺の家
に来ていたところ、期待通りだったので、お使いの者がとてもきまり悪く
思う程、歓待して酔わせたのでした。
娘のお返事はとても遅く、入道が娘の部屋に入って急き立てるけれど、
娘は全く聞き入れようとしません。とても素晴らしい源氏の君のお手紙に
お返事を書くのも気が引けて、臆してしまい、源氏の君と自分の身分の
違いを思うと、比較にもならないという気がして、気分が悪い、と言って
横になってしまいました。
説得に困り果てて、入道が返事を書きました。
「まことに恐れ多いことでございますが、田舎者の娘には嬉しさが身に
余るのでございましょう。まだ一度も経験したことの無い恐れ多い
お手紙を頂戴いたしまして。とは言え、
ながむらむ同じ雲居をながむるは思ひもおなじ思ひなるらむ(物思い
に耽って眺めておられるというその同じ空を、娘も同じ思いで眺めて
いるのでありましょう)
と、私には思われます。まことに色めいた申しようで」
と、申し上げました。陸奥紙に、たいそう古風であるけれども、書きぶり
は洒落ていました。本当に色めかしいことだ、と、呆れてご覧になります。
入道は、御使いに格別の美しい裳などを禄として与えたのでした。
翌日、源氏の君は、「代筆の手紙は貰ったことがありません」と言って、
「いぶせくも心にものをなやむかなやよやいかにと問ふ人もなみ(胸も
塞がる思いで悩んでいることよ。いかがですか、と問うてくれる人も
いませんので)まだ見たこともないあなたには、恋しいとも言いかねる
ので」
と、この度は、たいそうひどく優美な薄様に、とても美しくお書きになりました。
この手紙を若い女が素晴らしいと思わないとしたら、それは余りにも内気
過ぎるというものでありましょう。
娘は素晴らしいとは思うものの、比べようもないわが身の程を思うと、全て
が無駄な気がして、却って、こんな娘がいると源氏の君が自分の存在を
お知りになったことを思うにつけて、涙がこみ上げて来て、前日同様に、
全く筆を取ろうとしないのを、入道に無理にせっつかれて、十分に香を
焚きしめた紫の紙に墨付きを濃くしたり薄くしたりしながら書き紛らわせて、
「思ふらむ心のほどややよいかにまだ見ぬ人の聞きかなやまむ(私を
恋しく思ってくださるというあなた様の御心の深さは、さてどの程度なの
でございましょう。まだ逢ったこともない人が、噂だけで、悩むということ
があるのでしょうか)」
筆跡の具合や、歌の出来ばえなどは、高貴な女性にもさほど引けを取り
そうになく、貴婦人風の書きざまです。京でこうした恋文の遣り取りをして
いたことが思い出されて、楽しくお思いになりましたが、続け様に恋文を
お遣わしになるのも、人目が憚られるので、二、三日間を空けて、所在
無い夕暮れとか、或いはしみじみとした夜明け方に、それとなく紛らわせ、
その折々、相手も同じように情趣を感じるであろう頃合いを見計らって、
お手紙の遣り取りをなさると、娘はその相手として相応しいのでした。
思慮深く、気位の高い様子を知るにつけても、逢わずに終わりたくない、
とお思いになるものの、良清が嘗てまるで自分のものであるかのように
話していたのも心外であるし、長年心にかけていたであろうに、と思うと、
良清を目の前で落胆させるのも可哀想だとあれこれ思案をなさって、
女のほうから進んで仕える形を取ってくれれば、召人にして、うやむや
のうちに事を運んでしまおう、とお思いになりますが、女は女で、却って
高貴な身分の女性よりも酷く気位が高くて、いまいましく思われるような
態度なので、お互いに意地の張り合いで日が過ぎてゆきました。
京に残した紫の上のことを、こうして須磨の関を隔てて一段と遠くなって
みると、いっそう気掛かりにお思いになって、どうしたものであろうか、
冗談ではなく、心底恋しくてたまらない、こっそりとここにお呼び寄せ
しようか、と、気弱になられる折々もありますが、いくら何でも、このまま
こうして年月を重ねることにはなるまい、今更そのような人聞きの悪い
ことをするなんて、と、じっと我慢をなさっているのでした。
オンライン「紫の会」は第3月曜日(3/20)に続き、第4木曜日の
今日、同じ個所を講読しました(278頁・13行目~285頁・8行目)。
前半部分の全文訳は3/20に書きましたので(⇒こちらから)、
本日の全文訳は後半部分(282頁・3行目~285頁・8行目)と
なります。
(頁・行数は、「新潮日本古典集成 源氏物語二」による)
入道は、自分の願いがどうやら叶ったという気がして、さっぱりした気分
でいたところ、翌日の昼頃、源氏の君は岡辺に住む入道の娘にお手紙
を遣わされました。娘がこちらが気恥ずかしくなるほどの様子らしい、と
思われるにつけても、却ってこのような人知れぬ所に、意外にも素晴ら
しい女性が住んでいることもありそうだ、と、気をお遣いになって、高麗
の胡桃色の紙に、並々ではなく念を入れて、
「をちこちも知らぬ雲居にながめわびかすめし宿の梢をぞとふ(どこを
目指して良いかもわからず、遥かに噂を聞くばかりなのに思い悩み、
道が少しだけ見えている家の梢を頼りにお手紙を差し上げるのです)
あなたを恋しく思う気持ちに堪えかねまして」
とだけ書いてありましたでしょうか。
入道も、人知れず源氏の君からのお手紙を待ち申し上げて、岡辺の家
に来ていたところ、期待通りだったので、お使いの者がとてもきまり悪く
思う程、歓待して酔わせたのでした。
娘のお返事はとても遅く、入道が娘の部屋に入って急き立てるけれど、
娘は全く聞き入れようとしません。とても素晴らしい源氏の君のお手紙に
お返事を書くのも気が引けて、臆してしまい、源氏の君と自分の身分の
違いを思うと、比較にもならないという気がして、気分が悪い、と言って
横になってしまいました。
説得に困り果てて、入道が返事を書きました。
「まことに恐れ多いことでございますが、田舎者の娘には嬉しさが身に
余るのでございましょう。まだ一度も経験したことの無い恐れ多い
お手紙を頂戴いたしまして。とは言え、
ながむらむ同じ雲居をながむるは思ひもおなじ思ひなるらむ(物思い
に耽って眺めておられるというその同じ空を、娘も同じ思いで眺めて
いるのでありましょう)
と、私には思われます。まことに色めいた申しようで」
と、申し上げました。陸奥紙に、たいそう古風であるけれども、書きぶり
は洒落ていました。本当に色めかしいことだ、と、呆れてご覧になります。
入道は、御使いに格別の美しい裳などを禄として与えたのでした。
翌日、源氏の君は、「代筆の手紙は貰ったことがありません」と言って、
「いぶせくも心にものをなやむかなやよやいかにと問ふ人もなみ(胸も
塞がる思いで悩んでいることよ。いかがですか、と問うてくれる人も
いませんので)まだ見たこともないあなたには、恋しいとも言いかねる
ので」
と、この度は、たいそうひどく優美な薄様に、とても美しくお書きになりました。
この手紙を若い女が素晴らしいと思わないとしたら、それは余りにも内気
過ぎるというものでありましょう。
娘は素晴らしいとは思うものの、比べようもないわが身の程を思うと、全て
が無駄な気がして、却って、こんな娘がいると源氏の君が自分の存在を
お知りになったことを思うにつけて、涙がこみ上げて来て、前日同様に、
全く筆を取ろうとしないのを、入道に無理にせっつかれて、十分に香を
焚きしめた紫の紙に墨付きを濃くしたり薄くしたりしながら書き紛らわせて、
「思ふらむ心のほどややよいかにまだ見ぬ人の聞きかなやまむ(私を
恋しく思ってくださるというあなた様の御心の深さは、さてどの程度なの
でございましょう。まだ逢ったこともない人が、噂だけで、悩むということ
があるのでしょうか)」
筆跡の具合や、歌の出来ばえなどは、高貴な女性にもさほど引けを取り
そうになく、貴婦人風の書きざまです。京でこうした恋文の遣り取りをして
いたことが思い出されて、楽しくお思いになりましたが、続け様に恋文を
お遣わしになるのも、人目が憚られるので、二、三日間を空けて、所在
無い夕暮れとか、或いはしみじみとした夜明け方に、それとなく紛らわせ、
その折々、相手も同じように情趣を感じるであろう頃合いを見計らって、
お手紙の遣り取りをなさると、娘はその相手として相応しいのでした。
思慮深く、気位の高い様子を知るにつけても、逢わずに終わりたくない、
とお思いになるものの、良清が嘗てまるで自分のものであるかのように
話していたのも心外であるし、長年心にかけていたであろうに、と思うと、
良清を目の前で落胆させるのも可哀想だとあれこれ思案をなさって、
女のほうから進んで仕える形を取ってくれれば、召人にして、うやむや
のうちに事を運んでしまおう、とお思いになりますが、女は女で、却って
高貴な身分の女性よりも酷く気位が高くて、いまいましく思われるような
態度なので、お互いに意地の張り合いで日が過ぎてゆきました。
京に残した紫の上のことを、こうして須磨の関を隔てて一段と遠くなって
みると、いっそう気掛かりにお思いになって、どうしたものであろうか、
冗談ではなく、心底恋しくてたまらない、こっそりとここにお呼び寄せ
しようか、と、気弱になられる折々もありますが、いくら何でも、このまま
こうして年月を重ねることにはなるまい、今更そのような人聞きの悪い
ことをするなんて、と、じっと我慢をなさっているのでした。
オンライン茶話会
2023年3月22日(水) 溝の口「オンライン源氏の会」(臨時)
昨年の7月から、会場クラスとオンラインクラスの足並みが揃った
ところで、どちらのクラスにも振替自由で行き来ができるように
したのですが、夏にはコロナのために、そして先月は雪のために
会場の2クラスがそれぞれ中止になることがありました。今後も
こうした事態はあり得ることなので、会場クラスが中止になった際、
オンラインクラスに振り替えられるようにしたいと、第1水曜日に
例会を設けているオンラインクラスを後に廻すため、3月の例会を
一度抜き、4月の第1水曜日に、会場クラスの3月分を読む形に
しました。でもそれでは3月何もなくて寂しい、という声もあって、
本日臨時の会として、「オンライン茶話会」を設けました。
自由参加ですので、ご欠席の方も普段の講読会よりも多かった
のですが、オンラインではお互いになかなか話をする機会もない
ので、とても有意義な交流会となったのでは、と思っています。
先ず、3分以内で自己紹介をお願いします、と、招待メールに
書き添えておきましたので、8名の皆さまが、それぞれに
『源氏物語』を読むきっかけとなった出来事をはじめとして、趣味
の話や、東京マラソンに参加して完走した話、ドイツ等の外国の
方々との交流の話、などを、語ってくださいました。
また、ご自宅で飾っておられる手作りの可愛い端午の節句用
(男の子用)の吊るし雛を、お願いして近くに持って来て見せて
いただいたりもしました。
私からの話題としては、たまたま昨夜遅くに、ネットで来年の
NHKの大河ドラマ『光る君へ』のキャスト24人の相関図公開、と
いう記事を見つけたので、それを提供させていただきました。
こうした雑談で盛り上がると、時間はあっという間に過ぎてしまい
ます。講読会時には入れている休憩時間も忘れて取らなかった
のですが、気がつけば予定時間を超えていました。たまには
本に向かうことなく雑談オンリーも悪くないなぁ、と、思いました。
今はコロナも収束してきているし、そのうち一度会場クラスに振替
て、リアルに顔を合わせましょう、と約束を交わしている方々もあり
ました。うんうん、それもぜひ実現してください。

最後に「またねー」と手を振り合ってお開きです。
笑顔がとってもいいですね。写真教室で写真の
加工について勉強中、という方もありましたが、
私の写真は常に自動的ピンボケ加工が施されて
います(笑)
昨年の7月から、会場クラスとオンラインクラスの足並みが揃った
ところで、どちらのクラスにも振替自由で行き来ができるように
したのですが、夏にはコロナのために、そして先月は雪のために
会場の2クラスがそれぞれ中止になることがありました。今後も
こうした事態はあり得ることなので、会場クラスが中止になった際、
オンラインクラスに振り替えられるようにしたいと、第1水曜日に
例会を設けているオンラインクラスを後に廻すため、3月の例会を
一度抜き、4月の第1水曜日に、会場クラスの3月分を読む形に
しました。でもそれでは3月何もなくて寂しい、という声もあって、
本日臨時の会として、「オンライン茶話会」を設けました。
自由参加ですので、ご欠席の方も普段の講読会よりも多かった
のですが、オンラインではお互いになかなか話をする機会もない
ので、とても有意義な交流会となったのでは、と思っています。
先ず、3分以内で自己紹介をお願いします、と、招待メールに
書き添えておきましたので、8名の皆さまが、それぞれに
『源氏物語』を読むきっかけとなった出来事をはじめとして、趣味
の話や、東京マラソンに参加して完走した話、ドイツ等の外国の
方々との交流の話、などを、語ってくださいました。
また、ご自宅で飾っておられる手作りの可愛い端午の節句用
(男の子用)の吊るし雛を、お願いして近くに持って来て見せて
いただいたりもしました。
私からの話題としては、たまたま昨夜遅くに、ネットで来年の
NHKの大河ドラマ『光る君へ』のキャスト24人の相関図公開、と
いう記事を見つけたので、それを提供させていただきました。
こうした雑談で盛り上がると、時間はあっという間に過ぎてしまい
ます。講読会時には入れている休憩時間も忘れて取らなかった
のですが、気がつけば予定時間を超えていました。たまには
本に向かうことなく雑談オンリーも悪くないなぁ、と、思いました。
今はコロナも収束してきているし、そのうち一度会場クラスに振替
て、リアルに顔を合わせましょう、と約束を交わしている方々もあり
ました。うんうん、それもぜひ実現してください。

最後に「またねー」と手を振り合ってお開きです。
笑顔がとってもいいですね。写真教室で写真の
加工について勉強中、という方もありましたが、
私の写真は常に自動的ピンボケ加工が施されて
います(笑)
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