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安心材料を探す薫

2019年8月1日(木) 八王子「源氏物語を読む会」(第163回)

7月29日に梅雨が明けた関東地方ですが、それを待ち構えていた
かのような猛暑の日が続いています。

今日の八王子の最高気温は36度。電車を降りた途端、もわ~っと
纏わりつく熱気が感じられました。今日、明日が暑さのピークだそう
です。

このクラスは、今回から第52帖「蜻蛉」に入りました。

「蜻蛉」の巻では、誰しも「浮舟は死んでしまった」と思い込んでいる
ので、読者もそのつもりでいるほうが、登場人物の心に寄り添って
読み進められる気がします。

突然失踪した浮舟は宇治川に身を投げたに違いない、と考える
右近と侍従は、浮舟が急死したということにして、事実隠蔽のため
亡骸もないまま、その夜の内に火葬に付してしまいました。

夢にも思わなかった浮舟の突然の死。匂宮はショックで体調を
崩してしまわれました。そんな匂宮の様子を耳にすると、薫は
「やはり二人は、ただ手紙を遣り取りしているだけの仲では
なかったのだ。もし、浮舟がずっと生きていたら、やがて匂宮
とのことも世間に知られ、匂宮と私は身近な間柄なだけに、
この三角関係は赤の他人の場合とは異なり、自分にとっても
恥を晒すことになったであろう」と、思いを巡らすのでした。

そう考えることで、薫は「こがるる胸のすこしさむるここちしたまひ
ける」(浮舟を恋い焦がれる思いが少し醒める気がなさった)と、
あります。浮舟の死を正当化して、自身を安堵させる方向へと
持って行ったのです。

認めたくない事実を突きつけられた時、何とか理屈をつけて、
安心材料を探そうとする人間の心理を浮き彫りにして見せる
この作者の筆致、いつもながら驚嘆ですね。


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