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今月の光琳かるた

2021年12月4日(土)

師走はその名の通り、いつにも増して慌ただしく日が過ぎてゆく
気がします。4週間後にはもう新年です。

「光琳かるた」の入れ替えも、本年最後となりました。今は散紅葉
の綺麗な時期でもありますし、今月はこの歌を取り上げることに
いたしました。

「山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり」
                       三十二番・春道列樹
   光琳かるた32番
    (山中の川に風が架けた流れを堰き止める柵は、
     流れ切れないでいる紅葉だったのだなぁ)

「山川」は、「やまがわ」と濁って読みます。「やまかわ」と読むと、
「山と川」という意味になります(赤穂浪士の世界ですね)。

この歌の妙味は、「見立て」の面白さにあります。和歌における
「見立て」という技巧は、本来はまったく別であるものを、共通点
に着目し、同じものだとして考えたり扱ったりすることです。

例えば、12番の僧正遍照の歌、「天つ風 雲の通ひ路 吹きとぢよ
乙女の姿 しばしとどめむ」は、「五節の舞姫」を「天女」に見立てて
います。

この春道列樹の歌も、事実としては、山の中の川に散った紅葉が
流れ切らないのを、しがらみを架けたと見立てたものです。本来、
しがらみは人が架けるものなのに、風が架けたとして、風を擬人化
したところにも斬新さが感じられます。

作者・春道列樹は、『古今集』に3首、『後撰集』に2首、勅撰集に
残る歌はたった5首の、殆ど無名の歌人です。78番の「源兼昌」も、
勅撰集に4首しか採られていない点では同様でありますが、こちらは
何と言っても、名門源氏の人ですから、物部氏の末流と伝えられて
いるだけの春道氏は出自においても見劣りがします。その為詳しい
経歴もわかっておらず、文章生出身の官吏で、延喜20年(920年)に
壱岐守に任ぜられながら着任前に没したとされていますが、何歳で
生涯を終えたのかも不明です。
 
人物像もはっきりとしない春道列樹ですが、数少ない勅撰集に採用
された歌の中で、特にこの時期の感慨を詠んだ『古今集』(巻6・冬歌)
の下記の歌は、その普遍性に思わず拍手を送りたくなります。

年のはてによめる(大晦日に詠んだ歌)
「昨日といひ今日と暮らしてあすか川流れてはやき月日なりけり」 
(昨日、今日、と言って暮らしているうちに、「飛鳥川」の明日となり、
その川の流れと同じように、速くて止まることのない月日である
ことよ)→(あーあ、1年ってどうしてこんなに早いんだろう)


大君を振り返る

2021年12月1日(水) 溝の口「オンライン源氏の会」(第18回・通算158回)

今日から師走、カレンダーもいよいよラスト一枚となりました。

10月以降、新型コロナがニュースのトップで報じられることが少なくなり、
収束状態が続いているのを喜んでいましたが、ここへ来てまた新たな
変異株「オミクロン」の出現で、再びニュースのトップに取り上げられる
ようになりました。昨年は年末から第3波の到来で、新年も閉塞感に
包まれた中で迎えましたので、同じことの繰り返しにならぬよう、願う
ばかりです。

オンライン「源氏の会」もこれで年内最後となるので、第47帖「総角」を
読み終えたい、と思っておりましたが、ちょっと無理でしたね。残り2頁
程ですが、新年に回すことにいたしました。

大君が亡くなっても薫は京へ帰らず、宇治で八の宮家の人々と共に、
30日間の「御忌」に籠っています。今になって、大君の考えに従って
中の君と結ばれておけばよかった、と後悔もしています。薫はいつでも
「後悔先に立たず」の人です。

年老いた女房には、大君の死は殊の外「くちをしういみじきこと」(残念で
悲しくてならないこと)でした。弁が薫に大君を追憶して語ります。これに
よって、読者である我々も、共に大君の人柄を偲び、その生き様を今一度
振り返ることが出来る仕組みとなっています。

原文も書き出すと長くなるので、弁の語りを口語訳にして記しておきます。

「大君の病状が悪化なさったのも、匂宮のなさり方があんまりだと思われ、
『中の君は匂宮に弄ばれて捨てられた』と、世間の物笑いの種になること
をたいそう気になさっていたようですが、ご自分がそのように心配している
ことを中の君には気取られまいと、一人胸に秘めてお嘆きになっておられる
うちに、ちょっとしたおやつも口になさることなく、衰弱の一途を辿られるよう
になりました。上辺は何程の心配事があるようにもお振舞いではありません
でしたが、内心ではこの上もなくご案じになっておられたようで、亡き父宮の
ご遺言(宮家の誇りを傷つけるようなことだけはしてはならないということ)に
までも背くことになってしまった、と、どうしようもない程、中の君の身の上に
お心をお痛めになるようになられたのです」

こうして、まだ26歳という若い命を落とすことになった大君。残された中の君
を待っている運命は?というところで時間切れとなった今日ですが、「総角」
の結末は、次なるステージへと向かう出発点となります。新年はそこから
読んでまいりましょう。


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