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今月の光琳かるた

2022年6月4日(土)

先月は下旬にまでずれ込んでしまった「今月の光琳かるた」でしたが、
今月は第1週目に更新することができました。

1首目~50首目迄の歌で、残っているのは49番のみとなりましたので、
今回はその歌をご紹介しておきます。

「御垣守衛士のたく火の夜は燃え昼は消えつつものをこそ思へ」
                      四十九番・大中臣能宣朝臣
   光琳かるた・49番
   (宮中の御門を守る衛士の焚く篝火が、夜は赤々と燃え、
   昼は消えるように、夜は恋焦がれ、昼は心も消え入る
   ほどに、恋の物思いをしていることよ)

「御垣守衛士」の、一言でいうなら「逆玉物語」が、「竹芝伝説」として、
『更級日記』に書かれています。

武蔵の国出身の一人の男が、宮中の火焚屋の衛士として、朝廷に
差し出され働いていました。彼が望郷の思いにかられて、「俺は何の
因果で、こんなつらい目にあうのだろう。故郷の武蔵には、酒壷が
たくさん置いてあって、その上に浮かべた柄杓のひょうたんが、風の
吹くままその向きにそよいでいるのに、そんなのどかな景色を見る
でもなく、こんな目にあっているなんて」と、つい愚痴をこぼしてしまい
ました。その様子を御簾のもとに坐って見ていた内親王が、男を召し
寄せました。そして先程の独り言を復唱させると、内親王は「自分を
武蔵の国へと連れて行って欲しい」と頼みました。その晩男は、
内親王を背負い、武蔵へ向かって逃走しました。

京では帝や后が内親王の失踪を案じ、追捕の勅使が派遣されました。
3ヶ月後に武蔵に到着した勅使に対し内親王は「自分の意志で連れて
来てもらって、ここがとても気に入っている。これは前世からの因縁だ
と帝に伝えよ」と言います。帝も二人を認め、男に、生きているかぎり
武蔵の国を預け与え、租税や労役の免除も約束しました。男は家を
内裏のように立派に造り内親王を住まわせました。彼らが亡くなった
後、そこが竹芝寺になったとのこと。でもその後、宮中では火焚屋に
男を置くのは危険だということで、女が詰めるようになったのだ、と
『更級日記』の作者は聞き書きとして記しています。

作者・大中臣能宣は、清原元輔(42番)等と共に「梨壺の五人」として、
二番目の勅撰集である『後撰集』の撰にあたり、『万葉集』の解読にも
従事した平安中期の著名な歌人です。「大中臣氏」は、代々伊勢神宮
の祭主を務め、頼基(父)→能宣→輔親(子)→伊勢大輔(孫・61番)
と続く優れた歌人を輩出した家系で、「重代〈じゅうだい〉の歌の家」と
称されています。


三人の藤壺女御

2022年6月1日(水) 溝の口「CD源氏の会」(第17回・通算157回)

本来第1水曜日は「オンライン源氏の会」の日なのですが、今月に
限り、第2金曜日の「CD源氏の会」と入れ替えて行うことになりました。

昨年の10月から9ヶ月に渡って会場クラスの皆さまにご参加頂いて
まいりましたCDによる源氏講座も、このままコロナのリバウンドが
なければ、次の6月27日の録音をもって終了し、7月からは会場で
再開となる予定です。

今日は前半で第48帖「早蕨」を読み終え、後半は第49帖「宿木」に
入りました。オンラインクラスとの差は、テキストでちょうど1ページ分、
これなら、次回で足並みを揃え、7月を迎えることが出来そうです。

その「宿木」の巻は、「そのころ藤壺と聞こゆるは」(その頃、藤壺女御
と申し上げた方は)という書き出しで始まっています。冒頭に「そのころ」
を用いて新たな登場人物を語り出す方法は、第45帖「橋姫」と同じで、
「橋姫」では、「そのころ」に続く文章で、八の宮が紹介されています。

藤壺女御は、第一部、第二部、第三部(宇治十帖)それぞれに登場し、
もちろん別人です。後宮の藤壺(飛香舎)を居所とした女御、ということ
で、第一部の藤壺は、桐壺帝の女御。通常「藤壺」と言えば、この方を
思い浮かべるはずです。

第二部の藤壺は、朱雀帝の女御で、源氏の許に降嫁した女三宮の
母君です。第一部の藤壺の異母妹にあたります。

今回の「藤壺」が三人目で、今上帝の女御です。厳密に言うと、この
藤壺はここで初めて紹介されるのではなく、第33帖「梅枝」で、当時
まだ東宮だった今上帝の許へ誰よりも先に入内した左大臣家の姫君
として登場しております。当初は麗景殿女御と呼ばれていたので、
その後、藤壺に移ったものと思われます。続いて入内した源氏の娘の
明石の姫君は、、四男一女の御子に恵まれ、中宮に冊立されたのに
対し、藤壺には、女宮(女二宮)が一人しかなく、後宮では明石中宮に
圧倒されて無念な思いをなさっていました。それでもこの女二宮を大切
にお育てになって、14歳になったので裳着(女子の成人式)を挙げさせ
ようと準備に勤しんでおられる最中に、急死してしまわれたのでした。

残された女二宮を不憫に思う今上帝は、しっかりと女二宮を後見して
くれる男と見込んで、薫に降嫁させたいとお考えになります。

宇治で、中の君が匂宮と結ばれたのを機に、大君があれこれと物思い
に耽り体調を崩していった頃、都ではこのようなことが起こっていました、
というところから「宿木」は物語が始まっています。この宇治と京、時間を
並行させて、それぞれの立場から描く手法につきましては、先月オンライン
クラスで読んだ時に触れておりますので、そちらをご参照くださいませ
(⇒こちらから)。


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