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第10帖「賢木」の全文訳(15)

2021年5月27日(木) オンライン「紫の会・木曜クラス」(第10回・通算57回・№1)

今月のオンライン「紫の会」は、160頁・9行目~165頁・14行目までを
読みましたが、今日の全文訳は、5/10に書いた前半部分(⇨⇨こちらから
に続く後半部分(163頁・5行目~165頁・14行目)となります。
(頁・行数は、「新潮日本古典集成 源氏物語二」による)


紫の上は、しばらくの間に美しくご成長なさった感じがして、そんな紫の上が
ひどくしんみりとして、源氏の君との仲がどうなるのだろうと案じている様子が、
痛々しくも、愛しくも思われなさるので、自分のけしからぬ心のあれこれと思い
乱れるのがはっきりと素振りに現れるのであろうか、紫の上が「色かはる」と、
源氏の君の心変わりを歌に詠んでいたのも可憐に思われて、源氏の君は、
いつもよりもこまやかに話しかけなさるのでした。

山の土産にと持たせなさった紅葉を、お庭の物と比べてご覧になると、特に深く
染めた露の心も見過ごし難く、ご無沙汰のもどかしさも体裁が悪い程お感じに
なるので、ただ通り一遍のご挨拶のようにして藤壺に差し上げなさいました。

王命婦のもとへの手紙には、「参内なさったのを、珍しいことと承るにつけて、
東宮との間もご無沙汰になってしまいましたので、気になっておりましたが、
仏道修行もお勤めしようなどと思い立ちました日数を、途中で打ち切るのも
不本意ではないかと思い、幾日も経ってしまいました。紅葉は一人で賞翫
いたしますには、夜の錦の心地がいたしますので、良い折を見て、中宮さま
にご覧に入れてください」などと書いてありました。

本当に素晴らしい枝々なので、藤壺のお目が留まると、例によって、小さな
恋文が結び付けてありました。女房たちが控えているので、藤壺はお顔の
色も変わって、相変わらずこのような自分への懸想が続いておられるのが、
ひどく疎ましく、惜しいことに思慮深くていらっしゃる方が、不用意にこのような
ことを時折なさるのを、女房たちも変だと気付くであろうよ、と不快に思われて
、瓶に挿させて、廂の間の柱のもとに押しやらせなさいました。

一通りの要件のあれこれ、東宮に関わることなどは、源氏の君を頼りにして
いるふうに、堅苦しいお返事だけを藤壺は差し上げなさるので、源氏の君は
「なんと利口に、どこまでも自分につれなくなさることか」と、恨めしくご覧に
なりますが、何事につけ、いつもお世話申し上げて来たこととて、ここであまり
よそよそしくすると、世間の人が「おかしい」と、見咎めでもしたら困るとお思い
になって、藤壺が宮中から退出なさるはずの日に参内なさいました。

先ず朱雀帝の御前に参上なさると、帝はちょうどのんびりと過ごしておられる
折だったので、源氏の君は、昔や今のお話を申し上げなさいます。

帝は、御容貌も、桐壺院にとてもよく似ておられて、また一段と優美な雰囲気が
加わって、お優しくもの柔らかでいらっしゃいます。お互いにしみじみと懐かしく
ご覧になっておられました。尚侍の君(朧月夜)のことも、なお源氏の君との仲が
絶えていないようにお聞きになっており、それらしい様子にお気づきになることも
ありますが、いや何、今に始まったことならともかく、前から続いていることなの
だから、そんなふうに心を通わせているのも、不似合とは言えない二人の仲で
あることよ、と朱雀帝はご自身を納得させてお咎めにならないのでした。

四方山話をして、学問の道で不案内にお思いになっていることなどを、源氏の君に
お尋ねになって、また色恋に関する歌の話などもお互いになさったついでに、あの
斎宮の伊勢下向の日、その容貌が可愛らしくていらっしゃったことなどを、帝が
お話になったので、源氏の君も打ち解けて、野宮での六条御息所とのしみじみと
した別れの朝のことなども、すっかりお話になってしまわれたのでした。


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