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第10帖「賢木」の全文訳(18)

2021年7月12日(月) オンライン「紫の会・月曜クラス」(第12回・通算59回・№1)

大気の状態がとても不安定なようです。昨日今日とお天気が急変、
夕立に見舞われました。蒸し暑く不快指数も上昇しています。

第10帖「賢木」の三番目のポイントである「藤壺の出家」。今日は
その藤壺出家の場面を中心に読みました。

テキストの170頁・13行目~175頁・9行目までを読みましたが、
今回の全文訳はその前半部分(170頁・13行目~172頁・12行目)
です。後半は木曜クラス(7/22)のほうで書きます。
(頁・行数は、「新潮日本古典集成 源氏物語二」による)


十二月十日過ぎに、藤壺主催の御八講が行われました。たいそう尊い
ものでした。日々に供養として奉られるお経をはじめ、経巻に使われて
いる軸、羅の表紙、帙簀の飾りも、藤壺はまたとない程立派にお作らせ
になりました。このような特別のことではなくても、見事に整えなさる点
では世間並みではなくていらっしゃるので、ましてやこの法会は尤もな
ことでございます。仏さまの飾りや花机の覆いなどまで、本当の極楽が
想像されるものでした。

第一日目は藤壺の父君の先帝の御ため、第二日目は母后の御ため、
翌第三日目は桐壺院の御ためで、法華経第五巻目の日なので、
上達部なども、右大臣方への遠慮もとても気にしてはおられず、大層
大勢参集なさいました。今日の講師は、格別に厳選なさったので、
「薪こる」のところをはじめとして、同じように説く言葉も、とても尊いもの
でした。親王たちも様々の供物を捧げ持って行道なさる中で、源氏の君
のお心遣いなどは、やはり他に似るものもございませんでした。いつも
源氏の君の礼賛を繰り返すようですが、見申し上げる度ごとに、
素晴らしいのを、どう言うこともできません。

最後の第四日目は、ご自身のための祈願ということで、出家の旨を、
僧をして仏様に奏上させなさったので、参集した方々は皆驚かれました。
兄の兵部卿の宮、源氏の君も動揺なさって、呆れたこととお思いでした。
兵部卿の宮は、法要の途中で藤壺の御座所にお入りになりました。
藤壺は固い決意のほどを仰せになって、法会が終わる頃に天台座主を
呼んで受戒の由をおっしゃいました。伯父上に当たられる横川の僧都が
近くに参上なさって、御髪をお切りになる時は、邸内は大騒ぎで、不吉な
までに泣き声が満ち溢れました。

たいした身分でもない老いぼれた人でも、今はこれまで、と出家をする
時は、不思議に心を打たれるものなのに、ましてや前々から素振りにも
お出しにならなかったことなので、兵部卿の宮もひどくお泣きになりました。
法会に集まっておられた方々も、全体の法会の様子もしみじみと尊いもの
だったので、皆涙で袖を濡らしてお帰りになりました。
 
桐壺院の皇子たちは、昔の院が藤壺を誰よりもご寵愛になっておられた
ご様子を思い出されると、いっそうしみじみと悲しくお思いになって、皆
お見舞いを申し上げなさいました。

源氏の君はお残りになって、申し上げるべき言葉も無く、どうしてよいか
わからないお気持ちですが、どうしてそんなに動揺なさるのか、と周りの
人が不審に拝見することでありましょうから、兵部卿の宮などが退出に
なった後で、藤壺の御前に参上なさいました。


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