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第10帖「賢木」の全文訳(25)

2021年10月28日(木) オンライン「紫の会・木曜クラス」(第15回・通算62回・№1)

オンライン「紫の会」は、第2月曜クラスと第4木曜クラス、足並みを揃えて、
今月で第10帖「賢木」を読み終えました。

「賢木」の巻の最後として読んだのは、185頁・7行目~189頁・11行目迄
ですが、前半は月曜クラス(10/11)のほうで書きましたので(⇒こちらから
本日は、その後半部分(186頁・14行目~189頁・11行目)の全文訳です。
(頁・行数は、「新潮日本古典集成 源氏物語二」による)

右大臣は、思ったことをそのまま胸に納めておくことが出来ない性格である
上に、いっそう老いの偏屈さまでもが加わっておられるので、どうして躊躇
なさったりすることがございましょうか。即座に弘徽殿の大后にも訴え申され
ました。

「これこれしかじかの次第です。この懐紙に書かれているのは右大将(源氏)
のご筆跡です。昔のことも親の許しもなく始まってしまったことでしたが、
源氏の君の人物に免じて何もかも許して婿として世話をしよう、と言いました
折には、源氏の君は意にも介さず、失敬な態度をお取りになったので、
面白くなく存じましたが、これも前世からの定めと思い、帝がまさかキズ物だ
ということで娘をお見捨てになることもあるまい、と頼みにして、このように
初心を貫いて帝の許に差し出しながらも、やはりそのことでの遠慮もあり、
堂々と女御などとも名乗らせずにおりますことさえ物足りなく、残念に思って
いましたところに、またこのようなことまでございましたので、改めてとても
情けない気持ちになってしまいました。男にはありがちなこととはいえ、源氏
の君も酷くけしからぬお心でありますよ。斎院にも相変わらず畏れ多くも
言い寄っては、こっそりとお便りを交わしなどして、ただならぬ様子だなどと、
人が話しておりましたのも、帝の治世のためだけではなく、源氏の君自身に
取っても良くないはずのことなので、よもやそんな無分別なことをなさるはず
はあるまい、当代の識者として、天下を従えていらっしゃる様子は格別のよう
なので、源氏の君のお心を疑いはいたしませんでした」などとおっしゃると、
大后は一層激しいご気性なので、とてもご不興の面持ちで、

「同じ帝と申しても、昔から皆、今上帝(朱雀帝)のことをあなどり申し上げて、
致仕の大臣(左大臣)にしても、この上なく大事に育てていた一人娘(葵の上)
を、兄の東宮である方(現・朱雀帝)には差し上げないで、弟の臣籍に下った
まだ年端もゆかぬ方(源氏)の元服の副臥に決めて、またこの君(朧月夜)
をも、東宮への入内を心積もりしておりましたのに、愚かで恥さらしな有様に
なったのを、誰も誰もおかしなことだとお考えだったでしょうか。お父様
(右大臣)をはじめ、皆、源氏の君にお味方なさるようでしたが、その当てが
外れた具合になって初めて、女官として出仕なさったようですが、可哀想で、
何とかして女官という立場でも他の女御方に劣らぬようにお世話して
差し上げよう、あんな憎らしいことをした人(源氏)の手前もあるし、などと
思っておりましたが、彼女(朧月夜)はこっそりと自分の気に入った人(源氏)
に靡いてしまったのでありましょう。斎院との仲だって、いよいよもって
忍び逢う位のことはなさっているでしょうよ。源氏の君が何事につけても、
帝の御ために安心できないと思えるのは、東宮(のちの冷泉帝)の御代に
寄せる期待が格別な人なので、それも無理のないことなのでしょう」と、
容赦なくおっしゃり続けるので、右大臣もさすがに聞き苦しくなり、なんで
大后にご注進などしてしまったのか、とお思いになって、

「まあまあ、このことはここだけの話にしておこう。帝にも申し上げなさい
ますな。このような罪を犯したとしても帝がお見捨てになることはあるまいと
思って、あの子(朧月夜)はいい気になっているのだろう。あなた(弘徽殿の
大后)から内々に意見なさって、それでも言うことを聞かないというのでしたら、
その責任は私が負うことにいたしましょう」と、お取りなし申されますが、
特に弘徽殿の大后のご機嫌が直ることはありませんでした。

こんなふうにご自分(弘徽殿の大后)が同じ邸にいらして隙もないのに、
遠慮もせずに、そのように忍び込んでこられるというのは、わざと自分を
軽んじ愚弄なさっているのだ、とお考えになると、いっそうひどく腹立たしくて、
この機会に源氏の君を失脚させることを企てるには、よいきっかけだと
思い巡らされていたでありましょう。
                             第10帖「賢木」 了

                                 
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