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弘徽殿の大后の怒り

2021年10月28日(木) オンライン「紫の会・木曜クラス」(第15回・通算62回 №2)

第2月曜日のクラスに続き、第4木曜日のクラスも、オンライン「紫の会」は
今回で第10帖「賢木」を読み終えました。

右大臣に密会の現場を押さえられた場面につきましては、第2月曜日の
クラスのほうで書きました(⇒こちらから)。今日はその続きとなります。

性急で短慮なところのある右大臣は、証拠の懐紙を携えて弘徽殿の大后
の許に行き、事の次第を訴えました。さあ、弘徽殿の大后の怒り爆発です。

ここに至るまでに、既に弘徽殿の大后の源氏に対する恨みには深いものが
ありました。先ず、左大臣家の姫君(葵の上)を、東宮(現・朱雀帝)の妃に、
と申し入れたところ、左大臣は、東宮の弟で臣籍に下った源氏を葵の上の
婿に迎えてしまいました。更に、弘徽殿の大后の妹の朧月夜も、東宮妃と
して入内することが決まっていながら、あの「花宴」の巻で、源氏と結ばれて
しまったがために、宮中に上がっても「女御」にはなれず、女官として仕える
形を取らざるを得ませんでした。すべて、源氏が原因で息子(朱雀帝)が
踏みにじられてきた、ということになります。

そして今回の密会事件。「花宴」では朱雀帝もまだ東宮でしたし、朧月夜も
入内前の出来事でした。でも今回は違います。息子は帝になっています。
朧月夜も正式の妃ではないものの、他の女御を圧倒して、誰よりも帝の寵愛
を受けている身なのです。

ここまで源氏によって帝である息子がないがしろにされれば、弘徽殿の大后
の怒り心頭に発するのも無理のないことでありましょう。

源氏の行為は帝を冒瀆するものだとする弘徽殿の大后の論理は、理に適った
ものであるだけに、読者は弘徽殿の大后に同情を寄せたくなるのです。

ややもすれば、弘徽殿の大后は『源氏物語』きっての悪女のように言われがち
ですが、近年は内館牧子さんの『十二単衣を着た悪魔』や、酒井順子さんの
『紫式部の欲望』などで、弘徽殿の大后に味方する見解が示されるようになり、
昔から、「弘徽殿の大后ほど割に合わない損な役割を担わされている女君は
いない」と、思ってきた私は、密かにこうした傾向に拍手喝采しているのです。

この「賢木」の巻のラストシーン、詳しくは先に書きました全文訳・第10帖「賢木」
(25)でご覧頂ければ、と存じます(⇒こちらから)。


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コメント

No title

ばーばむらさき様

私も「十二単を着た悪魔」面白く読みました。
時代に関係なく、
自分の立場の責任を果たそうと頑張る女性がすきです。
弘徽殿魅力的でした。
内親王の自覚を持たないまま「私」を通した誰かより、
ずっと応援したくなりますね。
つい本音を(笑)失礼しました。

No title

soubokuさま

コメントを有難うございます。

『十二単衣を着た悪魔』は、実に荒唐無稽な設定の小説ですが、ストーリー展開が小気味よく、弘徽殿の女御の知名度もこれによってかなりUPしたのではないでしょうか。

コロナ禍で映画を観に行けなかったのが残念で、DVD化されたら必ず観よう、と思っております。


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No title

鍵コメントさま

ご丁寧なコメントを有難うございます。

この秋晴れも今日までとのことですが、青空に向かって深呼吸したいですね。

明日は、ずっとずっと会って話がしたかった友人二人とお茶を飲む約束をしています。楽しい時間を見つけて元気を出す、一番の薬かと思います。

No title

奔放な性格はうらやましくもありますが、周囲は振り回されて大変ですね(^_^;)

近年の見解のほうに、私も賛同します。
職場でも、気が強い人の意見が通ってしまう傾向があり、ときどきモヤモヤしますね。

No title

utokyoさま

コメントを有難うございます。

そうなんです。私も朧月夜のような生き方の出来る女性が、時に羨ましく思えます。

弘徽殿の大后の発言は理に適っているのに、いつもそれが通らない。弘徽殿の大后側に立って読むと、また違う世界が見えてくるようで、『源氏物語』は、やはり奥が深いですね。

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