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第11帖「花散里」の全文訳(2)

2021年12月23日(木) オンライン「紫の会・木曜クラス」(第17回・通算64回)

オンラインでの講座は、これで年内最後となりました。

「紫の会・木曜クラス」は、月曜クラスと同様、第11帖「花散里」の2回目
です。

今回も活字本で音読と解釈、その後変体仮名で文字を一字ずつ追って
読み、最後に本日の講読箇所の全文訳を読み上げる形で進めました。

本文の内容には月曜クラスのほうで触れておきましたので(⇒こちらから)、
今日は194頁・2行目~195頁・11行目までの全文訳を記しておきたいと
思います(頁・行数は、「新潮日本古典集成 源氏物語二」による)。


これといった身支度もなさらず、目立たないようにして、先払いなどもなく、
こっそりと中川の辺りを通り過ぎられると、こんじまりとした家で、木立など
が風情ありげで、良い音色の琴をあづまの調子に合わせて、掻き合わせ、
賑やかに弾いているのが聞こえてきました。

それが源氏の君のお耳に留まって、門に近い建物なので、牛車から少し
身を乗り出して中をご覧になると、大きな桂の木を吹きすぎる風に、賀茂
の祭の頃が思い出されて、何となく辺りの様子に風情が感じられ、たった
一度だけお通いになった女の家だとお気づきになりました。お気持ちが
動いて、随分時が経ったけれど覚えているだろうか、と気は引けるけれど、
行き過ぎ難そうに躊躇っておられた、丁度その時、ホトトギスが鳴き渡った
のでした。まるでこの家を訪れよ、とお勧め申し上げているかのようで、
御車を戻していつものように、惟光に案内を請わせなさいました。
 
「をちかへりえぞ忍ばれぬ郭公ほのかたらひし宿の垣根に」(昔に立ち返
って、郭公が我慢できずに鳴いております。ほんのちょっとお逢いした家の
垣根のところで)

寝殿と思われる建物の、西の端に女房達が座っていました。以前にも聞い
たことのある声なので、惟光は咳払いをして、相手の様子を窺って、源氏の
君のお歌を伝えました。若々しい女房達の気配がして、どなたかしら、と、
いぶかしがっているようでした。
 
「郭公こととふ声はそれなれどあなおぼつかな五月雨の空」(郭公が訪れて
鳴く声は、確かに昔のあの声ですが、五月雨の空が曇っているので、どうも
はっきりいたしません)

わざと分からないふりをしている、と思ったので、惟光は、「よしよし、家を
間違えたのかもしれませんね」と言って、出て行くのを、女は内心では、
恨めしくも残念にも思っておりました。源氏の君も「そのように遠慮せねば
ならないことなのだろうよ、無理もない」と思われるので、それ以上は流石に
何も言えないのでした。

この程度の身分の女としては筑紫の五節が可愛い女だったなぁ、と、先ず
は思い出されておりました。どんな女に対しても、お心の休まる時もなく、
苦しそうでございました。

年月が経っても、やはりこのように、昔関わった女のことをお忘れにならない
ので、却って大勢の女たちの物思いの種となっているのでした。


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