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後ろめたさの裏返し

2022年3月14日(月) CD「紫の会」(第5回 通算53回)

1ヶ月前の2月14日に、このCD「紫の会」の録音をした時は、立春から
10日経っても厳寒の日が続き、雪の話をしました。それが1ヶ月後の
今日はどうでしょう。もう夏日の一歩手前まで気温が上がり、外へ出る
のにコートも要らない陽気となりました。どちらも季節外れもいいとこで、
こんな極端な気候になるのも、やはり地球温暖化がどこかで影響して
いるのでしょうか。

このクラスは第10帖「賢木」に入って5回目。桐壺院の崩御をきっかけに、
再び源氏に言い寄られ、このままでは逃れ切れない危うさを感じた藤壺
は、出家を決意し、東宮に別れを告げるため、宮中に参内したのでした。

まだ数え年6歳の東宮は、出家の意味もよく理解できません。それでも
母に「見たてまつらむこともいとど久しかるべきぞ」(お目にかかることも
今よりいっそう間遠になりましょうよ)と言われると、会えない時は恋しくて
ならないのに、と涙がこぼれ落ちるのを恥ずかしがって横を向くそのお顔
が、「ただかの御顔を脱ぎすべたまへり」(ただもう源氏のお顔をそっくり
そのままお移ししたようでした)だったのです。

藤壺はそれを見て、「いとかうしもおぼえたまへるこそ心憂けれ」(本当に
これほどまでに源氏の君によく似ておられるのがつらい)と思い、世間の
口やかましさが空恐ろしく感じられるのでした、とあります。

東宮が源氏と瓜二つであることが、藤壺にとっては恐怖の種となっている、
というのです。それは源氏に生き写しであることから、東宮の実の父親が
源氏だと、世間が憶測して噂となったらどうしよう、と藤壺が危惧している
ことを意味しています。

表向きには、源氏は桐壺帝の第2皇子、東宮は第10皇子で、二人は兄弟
ということになっています。兄弟でそっくり、というのもよくあることで、他人
は源氏と東宮が似ているから親子なのではないか、と疑ったりするはずは
ありません。ただ藤壺がそう思っているだけなのです。

この辺りがやはり作者の手腕というべきで、人の心理を上手く捉えています
ね。心にやましさを抱えているからこそ生じる恐怖で、いわば後ろめたさの
裏返し、と言えるのが、この時の藤壺の心理状態だったと思えます。


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コメント

No title

負い目があると、それを意識しすぎて不自然な考えや行動に至ることは、たしかにありますね。
私もそうなりそうなので、事実を伏せたいときには相手の方とのやり取りを想定して、事前にシミュレーションしております(^^;;

No title

utokyoさま

そうなんです、負い目のなせる業、ってありますよね。

『源氏物語』の時代の人は、月へ行けるのは「かぐや姫」くらいで、実際に人が月へ行くなんて考えること自体、皆無だったと思います。

さほどに、千年の間の科学技術の進歩は想像を絶するものがありますが、人の心の動きというものは全く変わっていません。それを感じるのが古典を読む楽しさの一つかとも考えております。

No title

確かに、後ろめたさの裏返しはありますね。
人の心は、科学の進歩には引きずられない異次元の物と思いながら、
ふと、
ポリグラフ検査を思い出しました。いわゆるうそ発見器、科学との関係はありや、なしや?って。
ウフフ、バカですね。

No title

こすずめさま

コメントを有難うございます。

そういえば「うそ発見器」って聞いたことがありますね。私などちょっとしたことでもドキドキしちゃうたちなので、嘘をついていなくても反応してしまいそう💦💦💦逆にどんな場合でも物事に動じないという人だったら、嘘をついていても反応しないとか?そんな単純な機械ではないのでしょうね(笑)

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