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第12帖「須磨」の全文訳(3)

2022年3月21日(月) オンライン「紫の会・月曜クラス」(第20回・通算67回・№1)

今月のオンライン「紫の会」の月曜クラスは、三連休と重なったこともあり、
木曜クラスへの振替希望も多く、参加者が5名だけだったので、雑談で
盛り上がり、あまり読み進められませんでした。相変わらずダメな私です。

今日の講読箇所は、205頁・12行目~210頁・2行目迄で、その前半部分
(205頁・12行目~207頁・11行目)の全文訳を記しておきます。後半部分
は第4木曜日(3/24)のほうで書きます。
(頁・行数は、「新潮日本古典集成 源氏物語二」による)


致仕大臣は、昔のお話や亡き桐壺院のこと、故院が源氏の君のことを
お考えになり、帝にご遺言なさったご意向についてなどお話なさって、
直衣のお袖も目からお放しになれないのに対して、源氏の君も気丈に
涙をこらえることがお出来になりません。若君が無心に人々の間を歩き
廻って、どなたにも親しくなついておられるのを、源氏の君はたまらなく
お感じになっていました。

「亡くなった葵の上のことを、決して忘れることなく、今に至る迄悲しんで
まいりましたが、この度の事を思いますに、もしこの世に生きておりました
なら、どんなに思い嘆きましたことか、よくぞ短命で、こんな悲しい夢を
見ずに済んだことだ、と思って自分を慰めております。お小さい若君が、
こんな年寄りたちの中に残られて、父君であるあなたに慣れ親しまれる
ことの出来ない年月が続くことになられるであろう、と思われますのが、
何にも増して悲しうございます。昔の人も、本当に罪があって罪科に処せ
られるばかりではありませんでした。やはり前世からの因縁で、異国の
朝廷でも、無実の罪で処せられることは沢山ございました。ですが、
それだって、誰かの讒言があってそうしたことも起こったのです。ところが
此度のあなたの場合は、どう考えても思い当たる節がありません」などと、
あれこれとお話を申し上げなさいました。

三位の中将もそこにお出でになって、お酒などを召し上がっているうちに、
夜も更けてしまったので、源氏の君はお泊りになって、女房たちを御前に
侍らせて、お話をさせなさいます。他の女房たちより格別に源氏の君が
密かに情けをおかけになっている中納言の君が、口に出して言いたくても
言えず、悲しみにくれている様子を、源氏の君は人知れず可哀想に、と
お思いになっておりました。皆が寝静まった頃に、中納言の君だけを召して、
情けをお交わしになりました。今夜はこの人のことがお目当てでお泊りに
なったのでありましょう。
 
夜が明けたので、暗いうちにお帰りになりますが、有明の月がたいそう
趣深く見えております。花の咲いている木々が次第に盛りを過ぎて、
僅かに芽吹いた若葉の木陰が、月の光に白く輝いている庭に、
うっすらと辺り一面に霧がかかり、どこということなく霞んでいる様子は、
秋の夜の風情よりも一段とまさっているのでした。源氏の君は簀子の
隅の高欄に寄りかかってしばらくお庭をぼんやりとご覧になっています。
中納言の君は、お見送り申し上げようとするのでしょうか、妻戸を押し
開けて控えておりました。「またお逢いするのは、考えるとたいそう難しい
ことです。このような別れがある仲だとは思いもせずに、気軽に逢えたはず
の月日を、いかにものんびりと構えて過ごしたことですよ」などと源氏の君が
おっしゃるので、中納言の君はお返事も申し上げられず泣くのでした。


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コメント

No title

葵の上は、あっけなくなくなってしまったのですね・・・・
源氏との夫婦仲についても悩んでいたみたいですが、ストレスの蓄積は体にも良くないですね。
罠に嵌められるということは、昔もよくあったようですが、やっていないことを証明するのはなかなか難しく、私も気をつけなければと常々思っております。

No title

utokyoさま

コメントを有難うございます。

葵の上は六条御息所の生霊に憑り殺された、という今の世では非科学的で信じがたい死に方をしていますが、数え年で26歳、源氏と結婚して10年目に初めて授かった子どもを出産後まもなくという、親にとっては堪らなく悲しい最期でした。しかも夫から愛されることもなく。

源氏も帝が最も寵愛している女性(朧月夜)と密通を重ねていたのですから、反逆罪に問われたとしても仕方ないところもあると思うのですが、こと朧月夜に関しては、殆ど罪の意識がありませんね。

でも、罠に嵌められる、ということは今も昔も多々あることだと思います。弘徽殿の大后も、もっと源氏方を陥れようとしていたことが、ずっと後になってわかりますから。

彼岸の終わりに春の暖かさが戻ってまいりました。これで桜の開花が一気に進みそうですね。



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