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第12帖「須磨」の全文訳(4)

2022年3月24日(木) オンライン「紫の会・木曜クラス」(第20回・通算67回・№1)

一昨日、無事に白内障の手術も終わり、まだゴーグルの掛けっ放し、
1日4回複数の目薬を点す、顔や髪が洗えない、等々の不自由さは
ありますが、パソコンの画面も見えますし、オンライン「紫の会」の
木曜クラスの講座もさほど困ることなく、予定通りのところまで読み
進みました。洗ってもいない超すっぴん顔のバアさんが、ゴーグル姿
で、恥を晒してしまいましたが・・・そっか、ビデオをOFFにしておけば
良かったんだ!今頃気づいても遅いですね(-_-;)

講読箇所は、205頁・12行目~210頁・2行目迄で、月曜クラスと同じ
です。前半部分は21日に書きましたので(⇒こちらから)、今日は
後半部分(207頁・12行目~210頁・2行目)の全文訳を記しておきます。
(頁・行数は、「新潮日本古典集成 源氏物語二」による)


若君(夕霧)の乳母の宰相の君を使者として、大宮からのご挨拶が届け
られました。「直接ご挨拶も申し上げたいのですが、悲しみにくれて思い
乱れ躊躇っておりますうちに、たいそう夜深いうちにお帰りあそばすご様子
なのも、以前とはすっかり変わってしまった気持ちばかりがいたしまして。
可哀想な人がぐっすり眠っております間も、しばらくお待ちいただけること
もなく」と申し上げなさったので、源氏の君はお泣きになって、
 
「鳥部山もえしけぶりもまがふやと海士の塩焼く浦見にぞ行く」(鳥部山
で葵の上を葬った、あのときの煙に似ているのではないか、と海士が
塩焼く須磨の浦を見に行くのです)

お返事というのでもなく、口ずさみなさって、「明け方の別れは、ただもう
このように物思いを尽くすものであろうか。わかっていてくださる方もあり
ましょうね」とおっしゃると、宰相の君は「いつだって、別れという言葉こそ
辛いものといたします中にも、今朝はやはり比べるものもなく、辛く思われ
ることでございますよ」と、鼻声で申し上げ、ほんにとても悲しそうな様子
でした。「大宮に申し上げたいことも、よくよく心の内にはございますが、
ただもう悲しみに心も閉ざされておりますことをお察しくださいませ。
寝入っている若君のことは、もう一度顔を見るにつけても、却って未練が
出て、この辛い都を離れ難く思われるに違いありませんので、気を強く
取り直しまして、急ぎお暇いたします」と申し上げなさいました。
 
源氏の君が致仕大臣邸を後になさる時のお姿を、古くからお仕えして
いる女房たちは、覗いて見ておりました。西の山の端に傾きかけた月が
とても明るいので、源氏の君がいっそう優雅でお美しく、悲しみに沈んで
おられるご様子は、虎や狼でさえ、泣いてしまいそうでございました。
ましてや、源氏の君が幼くていらっしゃった頃から、見馴れ申し上げて
きた女房たちなので、これまでとは打って変わったご境遇を、たいそう
悲しいと思っているのでした。

そうそう、そういえば、大宮からのお返事です。

「なき人の別れやいとど隔たらむ煙となりし雲居ならでは」(あなたが
須磨へ行ってしまわれたら、亡き娘との別れはいっそう遠いものとなり
ましょう。同じ煙でも都の空の煙ではないのですから)

この歌の大宮の悲しみも加わってただもう胸に迫ることばかりで、源氏の
君がお帰りになった後までも、不吉なまでに女房たちは泣いておりました。
 二条院にお帰りになると、源氏の君のお部屋である東の対の女房たちも、
昨夜はうとうとともしなかった様子で、所々に集まって座り、あきれ果てん
ばかりの世の情勢を思い嘆いている様子です。侍所には、親しくお仕え
している者は皆、源氏の君のお伴をして須磨に参るはずの心づもりをして、
家族との別れを惜しんでいる頃なのでしょうか、人の姿もありません。
そうではない人たちは、源氏の君の許を訪れるのも厳しいお咎めがあり、
厄介なことが多くなるので、嘗ては窮屈に感じられるほど集まった馬や
牛車の影形もなく寂しいので、世間は情けないものだなぁ、と、源氏の君
は思い知らされなさるのでした。

台盤なども、片側は塵が積もって、畳も所々上げて裏返してあります。
自分がいる今でさえこんな有様なのだから、ましてや今後はどんなに
荒れてしまうことだろう、と源氏の君はお思いになっておりました。


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コメント

No title

ばーばむらさきさま、おはようございます。

白内障の手術、無事終えられて何よりと存じます。良かったです。

私も知り合いのメガネ屋さんに「萩原さんにはもっとクリアな世界を見てもらいたい」と同手術を勧められているのですが、眼科のお医者さんは「急がなくてもいいですよ」。ひょっとしたら今見ている世界は他の方の見ているそれとは違うのかも、と思ったりするのですが、未だ腰を上げずにおります。その後の経過、見え具合など教えていただけたら有難いです。

源氏が須磨に落ちて行く前に亡き妻の屋敷を訪ねる場面、感慨深いですね。幼い夕霧、この子が成長してからいいろいろあるんだよなあ、などと思うのも楽しいことです。

ご無理なさらず、どうぞお大事に。

No title

萩原さま

コメントを有難うございます。

おかげさまで、術後も特に問題なく過ごしております。私の場合、これまで掛かっていた眼科クリニックが閉院してしまい、新しいクリニックに行ったら、視力検査の段階で右目が0.04しか視力が出ていないことがわかり、即手術を勧められました。ここ数年、視力検査はしていませんでした。左目が0.7は見えるので、不自由を感じていなかったのですね。車の運転もしませんし。

手術自体は10分もかからない簡単なものです。術後の痛みも全く感じません。ただ、ブログにも書いたように、ゴーグルのつけっ放しとか、顔や髪が洗えない、目薬を忘れないように、といったことが面倒なだけです。

一番変わったと感じるのは「白」の色の見え方です。手術後の右目では同じ白い物を見ても、まさに「ホワイト」。左目で見ると何となく「アイボリー」がかって見えます。左目もやはり白内障は出ているので、この差があるのかと思います。

ここではまだ数え年5歳のあどけない夕霧が、「宇治十帖」では50代になり、政界の重鎮ですものね。大河ドラマの妙味です。

彼岸を過ぎても、気温変化が大きいですね。どうぞ気をつけてお過ごしくださいませ。

No title

ばーばむらさき様

白内障の手術無事終わられてよかったです。
私も少し白内障があると言われていますが、まだ手術の段階ではないようです。
今見えている(眼鏡をかけないと字は読めませんが)
世界としばらくは付き合います。
でもいつか手術を受け、子どもの頃のような(?)クリアーな景色に会えるのを楽しみにしています。只その時、鏡は見たくないかも(笑)

しばらくはご不自由でしょうがお大事にお過ごし下さい。

No title

ばーばむらさきさま。

いろいろ教えていただき有難うございます。
とても参考になります。

お大事になさってください。

No title

soubokuさま

コメントを有難うございます。

あと3日で術後1週間になり、受診して異常なければゴーグルを外し、洗顔や洗髪も出来るかと・・・。

眼下の公園の桜が色づいて見えます。満開になったところを見たいので、ゆっくり咲いてね、と桜にお願いしているところです。高知の桜はもう満開でしょうか?また実況中継を楽しみにしています。


No title

萩原さま

ご丁寧な返信を戴き、有難うございます。

今日は春の嵐が吹きまくっています。これではいくらゴーグルをつけていても、外に出るのは躊躇われます。冷蔵庫の中にあるもので済ませようと思います(笑)

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