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落葉の宮のその後

2022年10月14日(金) 溝の口「源氏物語を読む会」(第162回)

南関東はこのところ、スッキリとしない雨模様の日が続いております。
幸い今日は傘を使わずに済みましたが、明日も、東海以西は晴れ
マークが多い中で、やはり曇りマークになっています。

10月5日のオンライン「源氏の会」と同じ第49帖「宿木」の、匂宮が
夕霧の六の君との結婚の初夜を終えて、二条院の中の君の許へ
と戻って来られたところから、第二夜のために、再び出かけて行か
れるところまでを読みました。

帰邸後、すぐに匂宮は六の君に「後朝〈きぬぎぬ〉の文」を遣わされ
ました。これは当時のマナーです。文を使者に持たせると、そのまま
中の君の居る西の対へとお渡りになりました。

間もなく、夕霧から格別の禄を貰い受け、振舞酒に酔った使者が、
中の君とご一緒であることへの気遣いも忘れ、西の対に六の君から
の返事のお手紙を持参しました。

今更どうすることも出来ず、これは秘密の通い所からの手紙でもない
ので、匂宮は中の君にも隠し隔てのない態度でいよう、と、その場で
手紙を広げてご覧になりました。

すると、その手紙は「継母の宮の御手なめり」(養母の落葉の宮の
ご筆跡のようだった)ので、匂宮はホッとして、手紙を下に置かれた
のでした。

ここで読者も思い出します。そうだった、六の君の実母・藤典侍は
源氏の腹心の家来だった惟光の娘。母親の身分が低いので、夕霧
は、父・源氏がしたのと同じように、六の君を実母から引き離し、
皇女という高貴な身分の落葉の宮の養女にして、六の君の格上げ
を図ったのだったと。

今丁度、高座渋谷のクラスで、夕霧が落葉の宮に拒絶されながらも、
外堀から埋めていく形で、間もなく二人は結ばれる、というところを
読んでいます。第39帖「夕霧」です。落葉の宮が六条院の東北の町
の女主人となり、藤典侍腹の六の君の養母となっている、と記されて
いたのは、第42帖「匂兵部卿」でした。

その後、落葉の宮が物語の中で登場することは無く、「夕霧」の巻で
29歳だった夕霧が、今51歳になっていますので、この間に22年の
歳月が流れています。

落葉の宮にも様々な思いがあったはずです。でも実子が無く、六の君
を養女として育てることになった時の心境などは、何も書かれていま
せん。作者も二番煎じになるので止めておこうと思ったのか、明石の
姫君を巡る実母(明石の上)と養母(紫の上)の複雑な内面世界が
丹念に描かれていたのとは対照的です。少しスポットが当てられて
いてもよかったのではないかと思うのですが、落葉の宮の心の内は
覗くことが出来ません。

ただ、ここで六の君に代わり、匂宮の後朝の文に返事をしたため、
それは「あてやかにをかしく書きたまへり」(上品に趣深くお書きに
なっていた)というのですから、不本意な夕霧との再婚ではありまし
たが、22年の時を経て、今は六の君の養母として、立派に役割を
果たしていることはわかりますね。


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コメント

今年の秋は異常な暑さで始まりましたが、やっと秋らしい気候になって参りました
ところが、この後は一気に例年より寒い冬になるとか
年々、春や秋という、過ごしやすい気候が短くてなってきているような気がします

千年前の日本の季節は現代よりも、春夏秋冬がはっきりしいていたのでしょね

昨日は、いよいよ中の君が怖れていた匂宮と夕霧の六の君との結婚の、初夜が終わった後からのお話でした

昨夜は泣き明かしたであろう中の君に、心を尽くして慰める匂宮は、流石にプレイボーイ
その言葉を信じたいと思う中の君も可哀想ですね
没落した宮家の姫君で両親も亡くなっている中の君の立場が弱いだけに、匂宮の愛情だけが頼りというのは

しかも、今回は相手が時の最高権力者である夕霧の娘ということで、世間でも六の君を正妻と認めていることを中の君は承知しているでしょうし

ただ、姉の大君と違って、中の君は柔軟な心も持っているような気がします
匂宮の来世の約束を信じようとするところなど

実際匂宮も、中の君をゆくゆくは中宮にしたいとまで考えていますし
中々難しいことではあるでしょうが…
それだけ、中の君に対する愛情はは深いということですね

でも、昨夜の六の君のことも忘れられない
匂宮も辛いところでしょう(笑)

後朝の文の返事の代筆が落ち葉の宮だということで、先生のご説明をお聞ききしながら、六の君の義母になった落ち葉の宮に思いをはせてしまいました

夫の柏木に先立たれ、母親も亡くして、皇女とはいえその後の生活は大変不安なものだったと思います
嫌々夕霧の妻になってしまいましたが、真面目な夕霧は月の半分を正妻の雲居の雁の所へ、半分は落ち葉の宮の元へ通っていたとのこと

また、多くの子供達の中でも特に夕霧が可愛かっている六の君の継母として、存在感を持っているのは、ある意味幸せではないかと

六の君の代筆が「あてやかにをかしくかきたまえり」というところで、皇女としての嗜みもあり、そこに夕霧もひかれたのでしょうか

先生がおっしゃったように、六の君の生みの母である藤内侍の気持ちも気になります

こうして、宇治十帖には源氏の時代の懐かしい人々が出てくるのも興味深いですね

来月も先生の名解説、楽しみにしております♡

No title

夕鶴さま

毎月こうして、私がブログに書けなかったところを補ってコメントしていただけるのがとても有難く、嬉しいです。

匂宮のプレイボーイではありながらも、中の君への愛はけっしていい加減なものではないこと、中の君が不安でたまらない中にも、そうした匂宮の一面も敏感に感じ取って、将来に一縷の望みを託そうとしていることなど、細やかな描写を通して、読者にもその人物像がはっきりと伝わって来る書き方が見事ですよね。

それだけに、落葉の宮や藤典侍の心の葛藤に一言も触れてないのが、ちょっと物足りなさを感じさせるのかと思います。

本当に、10月初めの異常な暑さからして、過ごし易い穏やかな季節というのが、近年とても短くなってきている気がしますね。このところの気温の乱高下で、身体をついて行かせるのが大変です。来週は季節が進むと天気予報でも言っていますね。ご自愛くださいませ。

また来月もよろしくお願いいたします。

No title

心情の描写がないということで、読み手が想像するしかないですが、それを狙っているということなでしょうか・・・・
身分の違いで大きく人生が変わる時代、いろいろな画策をしなければならないのですね(^^;;

No title

utokyoさま

コメントを有難うございます。

読者に対して「ご想像ください」、というのも有りかもしれませんね。

この時代の身分格差というのは、今がいくら格差社会と言っても、くらべものにならない程ひどかったと思います。貴族と庶民では、もう別世界に生きている感覚だったようですし、同じ貴族の中でも、上流貴族と、中流貴族の間では大きな隔たりがあり、明石の姫君や六の君のように、実母が中流貴族出身だと、高貴な男性との結婚が難しいため、父親が、上流貴族出身の妻の養女にしたのですよね。

王朝貴族社会は華やかですが、生き難い時代だった気がします。再来年の大河ドラマでは、そのあたりのことも描かれるのではないかと思っているのですが。

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