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宰相の中将の須磨来訪

2022年11月21日(月) オンライン「紫の会・月曜クラス」(第28回・通算75回・№2)

オンライン「紫の会」では、今年の2月から第12帖「須磨」を
読み始め、10ヶ月をかけて今月で読了となりました。来月
からは第13帖「明石」に入る予定です。

年が改まり(源氏27歳)、源氏の須磨での侘住まいも、一年
近くになろうとしていました。思い出されるのは相変わらず
懐かしい京のことばかり。そんな折、思いも掛けない訪問者
がありました。宰相の中将です(この方、通称がないので
面倒なのですが、もとの頭中将、左大臣家の嫡男、葵上の
兄)。昔からずっと親友で、末摘花や源典侍を巡っては妙な
ライバル心を発揮したりもして来ましたが、源氏が須磨に
流謫してからというもの、京に居る中将も「世の中あはれに
あぢきなく、もののをりごとに恋しくおぼへたまへば」(世の中
がしみじみとつまらなく思われて、何かにつけて源氏のこと
が恋しく思われてならないので)、「ことの聞こえありて罪に
あたるともいかがはせむとおぼしなして、にはかにまうで
たまふ」(この一件が噂となって罪に当たることになっても
止むを得ないと決心なさって、にわかに須磨へとお出でに
なった)のでした。

一晩中、漢詩を作って過ごし、夜が明けると慌ただしく中将は
帰って行きます。お互いになまじの再会が却って辛く思われる
のでしたが、強い絆を再確認することにもなりました。

宰相の中将は右大臣家の婿(四の君が正妻)なので、京で
源氏の二条院を訪問する程度のことは大目に見てもらえも
したでしょう。でも須磨ではそういうわけにはまいりません。
源氏は勅勘の身で、自ら退居したとはいえ、流罪と同じ意味
を持って須磨で暮らしているのです。弘徽殿の大后をはじめ、
右大臣一派の知るところとなれば、当然罪に問われることに
なりましょう。それを承知の上で、須磨へとやって来たのです
から、これは並の者には出来ない真似で、宰相の中将に
男気を感じる場面です。

源氏が京へと召還されたのちは、二人は政治上のライバル
となってゆきます。前斎宮(六条御息所の娘)の入内など、
この時の熱い友情を思い出し、源氏は遠慮してもよさそうな
気がするのですが、権力の座を賭けての政治闘争の前には、
そうしたことも消え失せてしまったようです。

光源氏と頭中将(一般的な呼び名で)、どちらに肩入れしたく
なるか、という話になれば、私は頭中将に一票ですね。

この場面、詳しくは先に書きました全文訳の「須磨(18)」を
ご覧頂ければ、と存じます⇒こちらから


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コメント

No title

頭中将は、勇気ある行動をなさったのですね。
私も、自分の身は守りたいですが、可能な範囲で苦境に陥っている方のお役に立ちたいです。
権力を得るためには情に流されてはいけないのかもしれませんが、私は源氏のようにはできないですね(^_^;)

No title

utokyoさま

コメントを有難うございます。

友情のために危険をも顧みず須磨へとやって来た宰相の中将(頭中将)の行動には血の通った人間味が感じられますよね。

史実においても、フィクションにおいても、なぜにそこまでして権力に執着するのか、と、凡そ「権力」といったものに縁のない私などには思えるのですが、その立場にある人でないとわからないものなのかもしれませんね。

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