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匂宮の疑惑

2023年2月1日(水) 溝の口「オンライン源氏の会」(第32回・通算172回)

明後日は節分。このところ寒さが続いていますが、春はもうすぐ
そこまで来ているのですね。

オンライン「源氏の会」は、第49帖「宿木」の後半に入りました。

危うく迫って来る薫から逃れた中の君でしたが、翌日は久々に
匂宮が二条院に戻って来られました。夕霧の六の君との結婚後、
中の君の許へは夜離れが続き、そのために中の君は苦悶し、
宇治へ帰りたいとまで思い詰めていたのでした。

匂宮も、しばらくぶりに会うと、中の君の可憐さにいっそう愛おしさ
を覚えます。お腹が少しふっくらとし始めており、匂宮にとっても
この中の君の懐妊中の御子が第1子となるので、なおのこと、
中の君にとめどなく尽きせぬ愛をお誓いになります。

中の君も昨夜の一件で、薫ばかりを頼っていてはいられない、と
思い、匂宮にいつもより寄り添っておられると、匂宮も「限りなく
あはれと思ほしたる」(この上なくしみじみといとしくお思いになる)
のでしたが、「かの人の御移り香の、いと深くしみたまへる」(薫の
御移り香が、とても深く染みついている)のにお気づきになりました。

さあ、そこから匂宮の疑惑は広がり、中の君を責め始められます。
薫とは何事もなかったのだけれど、中の君としては、返事に窮して
しまいます。すると、ますます匂宮は、聞くに堪えないような言葉を
中の君に浴びせかけられるのでした。

中の君は利口な人ですから、薫の移り香のことも気にして、予め
下着の単衣なども着替えていたのです。それでも、薫の身体から
発する香りが染みついていた、と作者はわざわざ説明しています。

「また人に馴れける袖の移り香をわが身にしめてうらみつるかな」
(あなたが他の人と馴れ親しんだ袖の移り香を、我が身にしみこま
せてお怨みすることですよ)

と、匂宮に歌を詠みかけられ、あんまりだ、と思いながらも、黙って
いるのもどうかと思われて、中の君は返歌をしました。

「みなれぬる中の衣とたのみしをかばかりにてやかけ離れなむ」
(今まで馴れ親しんできた仲だとあなたのことをお頼りしておりました
のに、こんな移り香くらいのことで、これっきりとなってしまうので
しょうか)

とても巧みに匂宮のあらぬ疑いを批判し、濡れ衣を晴らそうとして
いるのがわかる歌ですね。歌を詠んで、泣いている中の君の姿を
見て、たとえ過ちがあったとしても許してしまいそうだ、と思う匂宮
ですが、それはこの歌の中に、事実を感じ取ってもおられたから
でありましょう。

第2金曜日と第4月曜日に会場での対面講座で、同じ個所の講読
をしますので、この続きはその2回でまたご紹介したいと思います。


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コメント

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No title

人を疑いだすと、どうしても悪い方向にばかり考えてしまいますが、こちらの返歌のように毅然とした態度で否定してくれたら、安心できそうですね。
人それぞれ、考え方や事情が違うので、疑う前にそういうことを汲み取っていくことも、大切だと思っています。

No title

utokyoさま

いつもコメントを有難うございます。

あらぬ疑いを上手く晴らすというのは、本当に難しいことだと思います。心の中で「それは違う」と思っても、実際には口に出来なかったりもするものです。

やはりこの場での中の君のように、相手に伝わる形で否定することが、お互いにとって大切な事なのでしょうね。

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