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薫からの詰問の手紙

2023年2月8日(水) 湘南台「源氏物語を読む会」(第239回)

先月のこのクラスの講読箇所紹介記事では、薫が匂宮と
浮舟の密通を知る迄の巧みなストーリー展開について
述べました(⇒こちらから)。

今回はその続きとなりますが、事の真相を知った薫は、
どのように対処しようとしたのでしょうか。

正妻にも浮舟の存在を告げ、京に住まわせる了解まで得て、
準備を進めて来た薫です。そのような事情も十分承知して
いるはずの匂宮の裏切りに、激しい憤りを覚えるのですが、
直接匂宮にそれをぶつけることは、自分の恥を晒すことにも
なるので、怒りの矛先は浮舟に向けられ、詰問の手紙を送り
ます。

薫の手紙はごくあっさりとしたもので、
「波越ゆるころとも知らず末の松待つらむとのみ思ひけるかな
(まさかあなたが私以外の男に心を移しているなんて思いも
寄らず、私を待ってくれているとばかり思っていましたよ)
人に笑はせたまふな(私を世間の笑い者にしないで下さいな)」
とだけ書いてありました。

とうとう薫の知るところとなってしまった、と思うと、浮舟は何と
返事をしてよいかわかりません。下手な言い訳などすれば、
それは匂宮との関係を認めたことになるし、かと言って、無視
することも許されません。結局、浮舟は「所違へのやうに見え
はべればなむ。あやしくなやましくて何ごとも」(宛先が間違え
られて届けられたようですので。妙に気分もすぐれないので、
何も申せません)と書き添えて、手紙を元通りにして、そのまま
返したのでした。

薫はそれを見て、「さすがにいたくもしたるかな」(随分と上手く
言い逃れをしたものだな)と、浮舟に対して、これまでにない
才気を感じます。

苦悩が浮舟を成長させ、そんな浮舟に薫が愛着を覚えるという、
皮肉な構図が浮かび上がってきますね。

薫とすれば、浮舟がこの先匂宮を拒絶し、何事もなかったかの
ように振舞ってくれれば、丸く収まると考えた上での行為だった
のかもしれません。でもこの薫からの手紙は、いっそう浮舟を
追い詰め、浮舟は死を願うようになるのです。

「浮舟」の巻も終盤が近づいて来ました。薫か匂宮か、どちらか
一人を選ぶことが出来るなら、浮舟はここまで苦しまずに済んだ
はずなのですが、選ぶことが出来なかったのが、彼女の限界と
言えましょう。ただ、そこにまた人間の本質が垣間見える気も
するのです。


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