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薫の昇進

2023年6月26日(月) 溝の口「湖月会」(第169回)

薫の中の君への断ち切れない思い、匂宮が夕霧の六の君と
結婚したことで、匂宮の子を身籠りながらも、不安定な立場に
置かれた中の君。第49帖「宿木」の第2年は、ずっとその状態
を引きずって来ましたが、第3年を迎えると、次のステージに
向かって、話が次々と進展して行くようになります。長かった
「宿木」も終わりが見えてまいりました。

「宿木」の第3年目(薫26歳)は、1月の末、中の君の出産が
間近となったところから語られ始めます。今上帝の女二の宮
の裳着(女性の成人式)の準備も進み、薫との結婚も近づい
ていますが、薫は、「そなたざまには心も入らで、この御こと
のみいとほしく嘆かる」(ご婚儀のことには気乗りもせず、
中の君のことばかりが案じられて嘆かれる)有り様でした。
帝の肝煎りで進められている結婚ですが、このような薫と
結婚する女二の宮はお気の毒ですよね。

月が替わり、2月の初めに、薫は権大納言兼右大将に昇進
します。これ迄の「中納言殿」という呼称もここからは「大将殿」
となります。

主な登場人物の大納言昇進時を見ると、源氏は明石からの
帰還時に28歳で、頭中将は「薄雲」の巻で36歳以上、柏木は
「柏木」の巻で32、3歳(これは帝の温情による昇進)、夕霧は
「若菜下」で25歳、となっています。

夕霧の場合は、父・源氏が准太政天皇という地位にあります
から、この若さでの大納言となったのでありましょうが、薫の
ような父親もいない身でのこの昇進は、やはり女二の宮の
降嫁が控えていたことによるかと考えられます。

今月の溝の口の第2金曜クラス、湖月会、オンラインクラスの
講読箇所は、続く中の君の出産と「産養(うぶやしない)の儀」
までとなりますが、そこはオンラインクラス(7/5)で取り上げたい
と思います。


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コメント

No title

もったいないような婚儀が進められているのに、心ここにあらずの薫。身分さえ「盛って」いただいているのに、人の心というのはどうにもならないものですね。中の君の魅力が素晴らしくもあるのでしょう。想う人に添えなかった、亡き父・柏木の姿が投影されているのかも知れません。もっとも、柏木の場合は、分不相応な恋に格段の差がありましたが。匂宮といい、薫といい、用意された妻以上に宇治の姫君に惹かれて隘路に迷い込んでしまいます。源氏と朧月夜の恋も思い出されます。恋路は何物にも妨げられない。そんなところでしょうか。

No title

吹木 文音さま

コメントを有難うございます。

人間は理屈ではわかっていても、どうにもならない感情が道理に従えないってことがあるのですよね。それは千年経った今でも変わらない人の性(さが)とも言うべきものでしょうが、『源氏物語』の中では(特に「宇治十帖」に入ると)、読者もその世界に引き込まれて共に考えさせられてしまいますね。

女二の宮は、朱雀帝の女二の宮も、今上帝の女二の宮も、夫に愛されない不幸な女宮ですが、落葉の宮が不本意ながらも夕霧と結婚して安定した生活を得たように、薫の妻となった女二の宮にも何かしらの幸せを与えてあげたい気がしますね。『山路の露』で、女二の宮が懐妊しているのも、そうした思いを作者が抱いたからではないかと思います。

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