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薫の孤独

2023年7月19日(水) 湘南台「源氏物語を読む会」(第244回)

日、月、火と、三日間続いた、最高気温が体温を上回る猛暑も
今日は少し落ち着きましたが、それでも、出掛ける頃の気温は
34度まで上がっていました。夜になっても31度。厳しい暑さに
変わりありません。

湘南台クラスが読んでいるのは、第52帖「蜻蛉」の前半で、浮舟
の死を知らされた匂宮と薫の動向が、細かに記されているところ
です。

薫が浮舟を京へ迎え取る予定だった4月10日、季節は夏になって
います。懐旧の情を誘う橘の香りが漂う中、ホトトギスが忍び音を
漏らし鳴き渡りました。薫は二条院に滞在中の匂宮に歌を贈ります。

「忍び音や君もなくらむかひもなき死出の田長に心かよはば」
(ホトトギスが忍び音を漏らすように、あなたも声を忍んで泣いて
おられるのでしょうか。今はもう甲斐もない亡き人に心をお寄せに
なっておられるならば)

「君も」の「も」には、言外に「私も」を響かせ、匂宮に対して浮舟の
ことを当て擦っています。

受け取った匂宮は、「けしきある文かな」(意味ありげな手紙だなぁ)
とご覧になって、

「橘のかをるあたりはほととぎす心してこそなくべかりけれ(橘の花
の香りのするところでは、ホトトギスも気を付けて鳴くべきですね)
わづらはし(迷惑なことです)」

とお書きになりました。「橘のかをるあたり」は「懐旧の情の深まって
いる薫の所」を指し、薫の「も」に対し、こちらは「は」を用いて、「薫
の所だけでは、冥途からの使いのホトトギスは軽々しく鳴くべきでは
なかったね」と、とぼけて返歌をしたことになります。

その後匂宮は中の君に、浮舟とのことを少し取り繕って打ち明けられ、
気の置ける舅の夕霧がいる六条院とは異なり、二条院は気楽で
くつろげる所だとお思いになっているのでした。

大君を喪った時、薫は匂宮に話すことで心慰められました。でも浮舟
に関しては二人はライバルとなってしまったので、薫は悲しみの持って
行き場がどこにもなく、孤独です。一方の匂宮には、浮舟を失っても、
その悲しみを埋めてくれる中の君が傍に居ます。薫の孤独をいっそう
際立たせていますね。薫の嫌味な歌にも、その辺りのことを加味して、
匂宮が返歌をしてくださればよかったのに、と思ってしまいます。


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コメント

No title

今晩は。

連日の気温の高さ、恐ろしい豪雨による被害など、
地球は変わってきてしまいましたね。
連日のお教室、お疲れ様です。

ところで、
この度は大変ご心配頂き、ありがとうございました。
全く家事には無関心で、
黙って大人しくTVを見ていれば3食出てくると心得ている同居人の心得違いに
疲れが増幅される退院後ですが、

これも日にち薬かとゆるゆる頑張ってまいります。
秋風の頃には、元気になれると思っています。

本当にありがとうございました。

No title

こすずめさま

わざわざこちらにコメントを戴き、恐縮です。

東海地方は梅雨明け宣言が出たようですね。この辺りはお昼頃にゲリラ豪雨というのでしょうか、突然のものすごい雨で、おかげで今はとても涼しくなりました。でも、来週後半は10年に一度の猛暑、とか言っています。また体温よりも高い気温の日が続くということでしょうか。ただでさえしんどい毎日です。病後のこすずめさまには、いっそう御身おいとい頂きたいと思います。

「男の人が入院しても家事に支障は来たさないけど、主婦が入院するとそっちも大変よね」と、姉ともLINEで遣り取りしたところです(姉も先日、手術のため10日程入院しましたが、もう退院して1週間。だんだんと元の生活に戻っているようです)。

退院後もすぐに家事をなさっているようですが、ここはどうぞご無理なくお過ごしくださいませ(と偉そうに言っても、私もこすずめさまの立場になれば、同じことになりそうですけど💦)。

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Re: タイトルなし

鍵コメさま

コメントを有難うございます。

薫と八の宮の三姉妹との関係は、いずれも実を結ぶことなく終わってしまい、「蜻蛉」では薫の孤独が際立っています。恋に関しては不器用で、おっしゃるようにある意味傲慢なところもありますが、匂宮も親友で無くなった今、自分の思いを誰かに聞いてもらうことも出来ず、やるせなさを感じさせます。

近代のフランス文学と言えば、いつだったかブログにも一度書いたのですが、私が「宇治十帖」を読んだ時の第一印象は、「大君って、『狭き門』のアリサと似てる」でした。『狭き門』のほうを先に読んでいたので、紫式部が真似をした?と思ったくらいです。でもそれはあり得ない話。逆もまた、まだアーサー・ウェイリーの英訳も出ていない時に、ジイドが『源氏物語』を読んでいたとは考え難く、これは偶然なのでしょうね。

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