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自ら身を引く五節の君

2023年7月27日(木) オンライン「紫の会・木曜クラス」(第36回・通算83回・№2)

この猛暑、いつまで途切れることなく続くのでしょうか。
天気予報を見ても、8月3日迄のこの先の一週間、
ずっと☀マークが並び、35度以上の猛暑日となって
います。すでに7月の猛暑日の回数は、最多記録を
更新し続けています。まさに「記録的猛暑」ですね。

このクラスも今回で第13帖「明石」を読み終えました。

明石の巻の最後は、京へと戻った源氏の動向が記され
ています。

紫の上との再会の喜び、政界への復帰(権大納言への
昇進)、朱雀帝との再会、東宮、藤壺とも再会(具体的
なことは書かれていない)しています。

明石へと戻る人に手紙を託すため、紫の上には隠れて
こまごまと思いを込め、お書きになります。

ここで再度登場するのが、大宰の大弐の娘・五節の君
です。まだ源氏の若かりし頃、五節の舞姫に選ばれ、
源氏と結ばれて、逢わなくなってからも(おそらく父の
任地の大宰府に同行したため)、源氏に好印象を残した
女性として描かれています。

父親の任期が果て、京へと向かう途中、須磨に流謫中
の源氏と歌の贈答を交わしました。そして今、源氏に
対して諦めの意思表示をする歌を贈ります。

「須磨の浦に心を寄せし舟人のやがて朽たせる袖を見せ
ばや」(須磨の浦で心をお寄せした舟人が、そのまま涙で
朽ちさせてしまった袖をお見せしたいものです)

五節の君は、権勢に返り咲いた源氏が、自分の届かない
所に行ってしまったと感じて諦める決意をし、せめて源氏
にその悲しい思いを知って欲しいというのが、この歌と
なったのでありましょう。

今の源氏は、あれほど逢いたかった紫の上との生活を
大事にして、浮気沙汰を慎んでおられるので、五節の君
のことも愛しく思い出されるものの、お逢いになることは
ありませんでした。

花散里にもお手紙だけで、実際にお出向きにはならなか
ったのです。

次の「澪標」の巻で、これらの女性たちのことが再び書か
れていますが、源氏を諦めた五節の君は親の勧める縁談
にも耳を貸さず、独身を貫こうとしています。源氏は二条の
東の院が完成した暁には彼女も愛人の一人として住まわ
せたい意向をお持ちでしたが、それは叶わなかったようです。

お互いに好意を抱き合いながらも、こうした形で終わった
だけに、後々、源氏も「五節」の折には、この五節の君を
思い出し、懐かしむことになったのではないか、と思われ
ます。

この辺りの詳しい話の流れは、先に書きました「全文訳・明石
(17)」で、お読みいただければ、と存じます(⇒こちらから)。


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コメント

No title

五節の君も須磨の源氏の君をお慕い申していたけれど、都にお帰りになってからの君に対してはそれほど惹かれることもなかったのでしょうか。

次回からは「澪標」ですね。楽しみにしております。

No title

keikoさま

コメントを有難うございます。

五節の君もやはりプライドの高い女性の一人かと思います。須磨に流謫中の源氏に対しては、孤独に寄り添いたい(自分の手の届く所に居る)と感じられたのでしょうね。でも、京に戻り権大納言に昇進した源氏は、高貴な女性たちに囲まれて過ごすもはや住む世界の異なる遠い存在となった、と感じられるようになったのではないか、と思います。その後、親に縁談を勧められても応じようとしておらず、源氏との若き日の思い出を胸に生きて行く道を選んだようです。愛するがゆえに離れていく、それも『源氏物語』に見える女性の生き方の一つかと思われます。

まだまだ猛暑日が続きそうです。どうぞご自愛下さいませ。

No title

信念を貫いた五節の君、潔さも持っていますね。
寂しさを感じていると、自暴自棄になり、恨みを晴らそうとしてかえって惨めになる場合も多いので、心情を書き留めるというのは、良い気持ちの整理法だと思いました。

No title

utokyoさま

コメントを有難うございます。手違いで、返信の順序があとになってしまい、申し訳ございません🙇

五節の君は、『源氏物語』の中では目立たない女君ですが、しっかりとした自分を持った女性だと思います。潔く身を引く、というのは楽なことではありませんものね。

そのような形で終わった二人の仲だったからこそ、光源氏の物語の最後の帖「幻」でも、源氏がこの五節の君のことを思い出しているのでしょう。

連続猛暑日記録は更新され続けています。ご自愛くださいませ。

No title

五節の君について、恥ずかしながらあまり考えたことがありませんでした。本筋から遠い女君の考察が、物語の深い読みに繋がることに気付き、うなってしまいました。身分が劣るとされている彼女は、流謫中の源氏に寄り添うことで存在感を発揮しようとしたのかも知れません。そして、また華やぎの中に戻って行った彼から潔く身を引いた。愛するが故の別離・・・確かにそうですね。自身のプライドを守った生き方です。身分の高下に関わらず、意思を思って自らの身の振り方を決定し、貫いた五節の君。彼女を、幻の巻で辿る源氏。立派な一つの愛の形になっています。五節を華やかに彩るだけではない存在の主張は、惟光の娘の「五節の君」の伏線となっている気がするのは読み過ぎでしょうか?彼女は、本妻の雲居雁より以上に優れた娘を設けます。長じて後は、夕霧の大切な切り札として描かれます。中の君や匂宮の心を惑わせる存在になりますね。内親王でも、宮家の息女でもない舞姫が、物語のスパイスになる。なんだかおもしろいな~と思います。ちょっと走りすぎた読みでしたら、申し訳ありません。女君を細部に渡っていきいきと描き尽くす作者の筆に、改めて感服です!

No title

吹木 文音 さま

コメントを有難うございます。

「五節の君」は、実際に本人が登場する場面は極めて少ないのですが、源氏が常に好感を持って回想していることで、存在感を示していると思います。

身分の上下に拘らず、プライドを持って自分を主張できる女性が、作者の目指した理想の姿だったのは、「夕霧」の巻での紫の上の述懐からも窺えますよね。

筑紫の五節の存在が、のちの藤内侍の存在に、「五節繋がり」で受け継がれていく。なるほど、です。

作者自身も受領階級であったがゆえに、明石の上だけではなく、こうした受領階級にも高貴な姫君たちに劣らぬプライドを持った女君たちがいたことを、アピールしたかったのかもしれませんね。

『源氏物語』って、ちょっと視点を横に逸らせて読んでも、新たな面白さが発見できますね。同じ愛読者として、これからも様々なご意見をお聞かせいただければと思います。

今日も(今日までとなるといいですね)猛暑日です。お疲れの出ないようにご自愛くださいませ。

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