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高らかに響き渡る笛の音

2023年8月11日(金) 溝の口「源氏物語を読む会」(第171回)

立秋を過ぎても、相変わらずの猛暑の毎日です。加えて
台風7号が、週明けには接近の予報が出ており、14日の
会場での「紫の会」は中止ということになりました。

今月の第2金曜クラス、第4月曜クラス、9月の第1水曜の
オンラインクラスの3クラスの講読箇所は、第49帖「宿木」
の、帝主催の藤の花の宴と、続く女二宮が三条の宮に
移る場面までです。

立夏になると、三条の宮が宮中から見て方塞りになるとの
ことで、薫はその前に女二の宮を宮中の藤壺(飛香舎)から
自邸(三条の宮)に移すことにしました。

その前日、女二の宮の住まいとなっている藤壺で、帝が
藤の花の宴を催されました。親王たちや、夕霧をはじめと
する上達部、殿上人たちも集う華やかな宴となりました。

日が暮れる頃から管弦の遊びが始まります。読者も嘗ての
出来事のあれこれを辿りながら読むことのできる場面です。

先ずは、源氏が自身で書いて女三宮にお与えになったと
いう琴の琴の譜二巻が、帝に献上されました。

そういえば、朱雀院の五十の御賀で、女三宮が父院の前で
琴の琴の演奏を披露すべく、源氏が女三宮を特訓していた
ことがあったなぁ、と読者は思い出します。源氏との結婚生活
において、唯一、女三宮にとって幸せだったのはこの時では
ないかと思います。

次いで、本日のタイトルにも書いた横笛の話です。これを吹く
のは薫です。「笛は、かの夢に伝へしいにしへの形見」(笛は、
あの夕霧の夢の中で伝えた、亡き柏木の形見の品」と説明
されています。

夕霧が柏木の未亡人の落葉の宮を弔問した帰り際、落葉の宮
の母・一条御息所が、柏木の遺愛の横笛をお土産として下さい
ました。その夜夕霧の夢枕に立った柏木が、「この笛は他に伝え
たい人がいる」と言ったので、薫の本当の父親は柏木ではないか、
との疑念を抱いていた夕霧は、横笛を持って、父・源氏を訪ね
ましたね。もちろん源氏は夕霧に事実を打ち明けることなどせず、
その笛を預かったのでした。それが夕霧28歳の秋のこと、そして
今夕霧は52歳。24年の歳月を経て、あの時の横笛がここに再び
登場したのです。柏木が望んだ人(我が子の薫)に伝わり、そして
「大将の御笛は、今日ぞ世になき音の限りは吹き立てたまひける」
(薫の吹く横笛は、今日のこの晴れの場で、世にまたとない程の
音色の限りを高らかにお吹きになった)とあります。

柏木の逝去からちょうど四半世紀。薫の吹く横笛の音に、あの世
の柏木も喜んでいたのではないでしょうか。


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コメント

昨日は、この連休からお盆休みを取った方が多いようで、お教室のあるマルイ溝の口店も、休日にもかかわらず人が少なく、やや閑散とした雰囲気でした

「宿木」もいよいよ、次回で読み終えることになりそうです

帝主催の「藤の花の宴」は多くの上達部や殿上人が集まる豪華な宴になりました

先生がお話し下さった、かつて女三の宮が父上の朱雀院の前で琴の琴を披露するため、源氏が自ら猛特訓したこと
あの数日だけが、女三の宮にとって短い結婚生活の中で、唯一幸せな日々だったのではなかったかと
本当にそうですね
ただ、その一方で、紫の上は毎晩のように女三宮の元に行く源氏の姿を見て眠れなくなり、どんどん体調を崩していきましたね

薫の横笛のことも、笛の名手であった柏木が一番手渡したかったであろう自分の横笛が薫に伝わり、父親譲りの才能で素晴らしい演奏をしたこと
先生がおっしゃるように、柏木もあの世で喜んでいたでしょうね

帝が臣下に女二宮を嫁がせるこになっても、大変お喜びになっておられることで、薫がいかに将来を嘱望された若者であるということがわかります

正妻となった女二宮は、どこという欠点もなく美しいご様子なのに、どうしても大君が忘れられない薫は、宇治のお寺の準備にばかり熱中しているのが、女二宮には気の毒すぎます

先生に教えて戴いた、「夢浮橋」の続編として書かれた作者未詳の「山路の露」はネットであらすじだけを読んでみました

本当に、女二宮が懐妊したのは読者としてもホッとする出来事ですね
やっと子供が出来たことで、女二宮に幸せな日々が訪れますようにと願ってしまいます

次回は、いよいよ「浮舟」の当初です‼︎

No title

夕鶴さま

いつも丁寧なコメントをお寄せいただき、有難うございます。

そうですね、昨日は電車も空いていて、帰りは珍しく溝の口から座れました。

「藤の花の宴」の場面は、過去と現在とを上手く交錯させて、読者にもいろいろなことを思い出させてくれる構成となっていますね。

女三宮への猛特訓が功を奏し、リハーサル的な意味もこめて六条院で行われた女楽は大成功でしたが、直後にそれまでの心労がたたって、紫の上が倒れてしまいました。

そこから始まる六条院の悲劇。女三宮と柏木の密通事件が起こり、結果として薫が生まれ、柏木は亡くなりました。残された柏木の横笛が、四半世紀を経て薫によってまたとない音色で吹き立てられるなんて、やはり『源氏物語』は壮大な大河ドラマですよね。

次回からは、いよいよ『源氏物語』のラストヒロイン、浮舟の話に入って行きます。頑張って「宿木」は読み終えたいと思っています(極力、余談は入れないようにして💦)。

猛暑に台風、気の休まらないお盆期間ですが、気をつけてお過ごしくださいませ。

また来月、よろしくお願いいたします。


No title

懐かしい楽器の音色を聴くと、当時のことが走馬灯のように思い起こされるでしょうね。
楽器の才能も、受け継がれることはあると思いますが、たくさん音楽を聴いていることで一層身についたのではないかとも想像しています。

No title

utokyoさま

いつもコメントを有難うございます。

当時は「遊び」という言葉自体が、「管弦の遊び」を意味していたほど、音楽は貴族社会に浸透していたのでしょうね。

『源氏物語』では、楽器の演奏の才能が遺伝的に受け継がれていることも書かれていますね。

第44帖「竹河」の巻で、玉鬘が薫の和琴の演奏を聴いて、薫が不思議なほど柏木とよく似ていて、琴の音など、もう柏木その人が演奏しているのではないかと思われる、と語るところがあります。柏木と玉鬘は異母姉弟ですが、薫の実父が柏木であることは知りません。知らないからこそ口にすることも出来たのでしょうが、伝授されることがないまま演奏法が秘された血脈の中に受け継がれていることを示していて、読者もドキリとさせられる場面です。

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