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第14帖「澪標」の全文訳(1)

2023年8月21日(月) オンライン「紫の会・月曜クラス」(第37回・通算84回・№1)

7月から会場クラスとオンラインクラスの足並みが揃い、3クラス間
での振替受講も自由にしていただけるようになって、やれやれ、と
思ったのですが、先週(7/14)の会場クラスが台風の影響で中止と
なり、再びオンラインクラスが先行する形となってしまいました。

来月から、会場クラスをまた30分延長して、出来れば10月迄の
2ヶ月でオンラインクラスに追いつくようにしたいと考えております。

ですから、今月の全文訳は、オンラインクラスのみで、前半、後半
に分けて書くことにしました。講読したのは第14帖「澪標」の最初の
部分(11頁・1行目~16頁・11行目迄)ですので、今回はその前半
(11頁・1行目~14頁・2行目迄)の全文訳となります。
(頁・行数は、「新潮日本古典集成 源氏物語三」による)


まざまざと夢の中に現れなさってからは、源氏の君は父・桐壺院の
ことを心に掛けておられて、何とかして、あの時、院がおっしゃった、
苦しんでおられるという罪からお救い申し上げたい、と、お嘆きに
なっておられましたが、こうしてご帰京あそばしてからは、その準備
をなさっておいでです。十月に法華八講をなさいました。世間の誰も
が心を寄せてご奉仕申し上げるのは、昔のようでございました。

弘徽殿大后は、やはりお具合がひどくすぐれない時でも、遂に源氏
の君を政界から抹殺し切れなかったことだと無念にお思いでしたが、
朱雀帝は父・桐壺院の御遺言をお心にかけておられました。父院の
御遺言に背いて何か報いがあるに違いない、と思っていらっしゃい
ましたが、こうしてきちんと源氏の君を復位させなさって、ご気分も
すっきりとなさったのでした。

時折病に苦しんでおられた御目も回復なさいましたが、そもそも
長生き出来そうにもなく、心細いばかりだ、と、ご在位も長からぬ
ことをお考えになっては、常にお召しがあるので、源氏の君は参内
なさるのでした。帝は世のまつりごとなども、すべて源氏の君に
ご相談なさってはご満足のご様子なので、世間一般の人も、事情
はわからないものの、源氏の君の政界復帰を嬉しいことと、喜び
申し上げておりました。

朱雀帝は、ご退位なさろうというお心積りが近づくにつれても、尚侍
(朧月夜)が心細そうに身の上を思い嘆いておられるご様子を、
とても不憫にお思いになっておられました。「あなたの父・大臣亡く
なられ、大后も頼りがいもなく病気が重くなられる上に、私も余命
幾ばくも無い気がするにつけ、たいそうおいたわしいことに、あなた
はこれまでとは打って変わった境遇で、一人この世にお残りになる
こととなりましょう。あなたは昔から私のことをあの人(源氏の君)
よりも軽んじて来られましたが、私はあなたへの誰にも劣らぬ深い
愛が身についてしまい、ただあなたのことばかりが愛しく思われる
のです。あなたにとって私以上のあの人と、再び望み通り結ばれる
ことがあっても、並々ならぬ愛情という点では、私以上ではあるまい
と思われることも、たまらなくつらいのです」と言って、お泣きになり
ます。

朧月夜は、顔をたいそう赤らめて、こぼれるほどの魅力で、涙をこぼす
のを、帝はすべての罪を忘れて、朧月夜のことをしみじみと可愛らしい
とご覧になっておられました。「どうしてあなたはせめて御子だけでも
お産みくださらなかったのでしょうか。本当に残念なことだなぁ。宿縁の
深いあの人のためになら、今すぐにでもお子を儲けなさるであろう、と
思われるのも口惜しいことよ。でもそうなっても、身分は越えられない
ものだから、その子は臣下としてお育ちになるのですよね」と、帝が
先々のことまでもおっしゃるにつけ、朧月夜は、とても恥ずかしくも
悲しくもお思いでした。

帝のご容貌などは、優雅でお美しくて、朧月夜へのこの上ないご愛情
が、年月に添えて深まるように大切にお扱いになりますが、一方の
源氏の君は、素晴らしい方ではあるけれど、そんなにも自分を愛して
くださってはいなかったご様子やお気持ちなどが、いろいろと物事が
お分かりになって来た今は、「どうして、自分の心の至らなくて無知な
ままに、あのような騒動までも引き起こして、自身の評判を落とした
ことはもとより、源氏の君にまでもご迷惑をおかけしてしまった」など
と思い出されるにつけ、たいそう我が身が厭わしくなるのでした。

翌年の2月に、東宮の元服の儀が執り行われました。東宮は11歳に
おなりですが、お年の割に大きくて、大人びてお綺麗で、ただもう
源氏の大納言のお顔をもう一つそっくり写し取ったようにお見えに
なります。お二人がとても眩しいほどにお互いに光輝いておられる
のを、世間の人は、素晴らしいことだと申し上げますが、藤壺は、
ひどくいたたまれない思いで、どうにもならないことにお心を痛めて
おられました。

朱雀帝も東宮を立派だとご覧になって、まつりごとをお譲り申し上げ
ようとお考えになっていることなどを、やさしく東宮にお聞かせなさる
のでした。


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