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格上の乳母

2023年9月18日(月) オンライン「紫の会・月曜クラス」(第38回・通算85回・№2)

今日は「敬老の日」。これまでに、こんな猛暑の中での
「敬老の日」って、あったでしょうか?

朝刊に、高齢者が全人口の30%近くになっていることが
出ていましたし、夜のニュースでは、これまで75歳以上の
高齢者を対象に行っていた「敬老の日」の祝賀行事が
出来なくなっている自治体の増加を取り上げていました。
「敬老」の対象者を75歳→77歳→80歳へと引き上げる
自治体もあるとか。団塊の世代が一気に後期高齢者を
増やしているのですね。かく言う私も、来年の「敬老の日」
は、後期高齢者となって迎えることになります。

今月のオンライン「紫の会」は、来月で会場クラスとの
足並みを揃えたいので、読み進んだのは、第14帖「澪標」
の、「明石の姫君の誕生」~「源氏が京から派遣した乳母
が明石に着いたところ」迄で、少なめです。

宿曜の占いで、将来「后」の位に就くことを予言された娘
が、明石のような田舎で生まれたことを不憫に思う源氏は、
京から乳母を派遣することにします。

源氏のお眼鏡に適った乳母は、母親は桐壺帝の許で宣旨
(詔勅を伝える役目をする女官)を務めた宮廷の上臈の
女房、父親は宮内卿の宰相(宮内省の長官で参議)で、
在職中に亡くなった上達部(上級貴族)。由緒正しい出自の
女性です。ただ、今は母の宣旨も亡くなり、これといった頼る
人もいない身で、妻として認めてもらえない男性の子を産み、
心細く暮らしていたので、源氏が伝手を頼り、明石の姫君の
乳母となるよう依頼して来られたのを、深く考えることもなく、
引き受けたのでした。

一方の主人側となる入道の娘は、父親が中央官僚を捨てて
地方官(播磨守)となったのですから、出自は受領階級となり
ます。主人側は中級貴族、仕える乳母側は上級貴族、と、
乳母のほうが格上で、通常とは出自が逆転しています。

源氏は、乳母が明石に出発前に会いに行き、若く美しいのを
そのまま見過ごせず、「別れが惜しくて、あなたを追いかけて
行きたい」などと、色めいた振る舞いで揺さぶりをかけます。
それに対し、宣旨の娘は、「その出まかせの言葉を口実に、
本当は恋しいお方のおられる所にいらっしゃりたいのでは
ありませんか」と、なかなか気の利いた返事をしました。

これは言わば、一種の就職面接テストの意味もあったので
しょう。ここで、源氏の戯れを本気にして、明石への下向を
躊躇うようでは、明石のような辺鄙な場所で、乳母として
務まるかどうか、危ぶまれます。でも、このような機知に
富んだ返事が出来る宣旨の娘は、源氏の姫君の乳母と
して文句なしで合格だった、と言えるでしょうね。

この部分、詳しくは先に書きました「澪標・全文訳(4)」で
ご覧頂ければ、と存じます(⇒こちらから)。


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コメント

No title

お早うございます。

小さな町内会でも高齢化問題はあります。
若い家族は町内会に入らず、不燃ゴミ当番などもジジババで勤めています。
町内会費は増えないまま、敬老の日のお祝いなどは対象者が増えていきます。
私の頃にはお祝いどころか、町内会そのものが存続しているかどうか?

とりあえず若い家族への当番は免除しての入会勧誘を試みようと思っています。
お祝い頂きたいので(笑)

No title

soubokuさま

コメントを有難うございます。

人口の30%が高齢者、再来年迄に団塊の世代が全員後期高齢者となりますから、後期高齢者の占める割合もグーンと上がることになるでしょうね。少子高齢化は進む一方で、この先の日本、どうなるのでしょう?「敬老の日」の祝賀行事問題など序の口な気がしますね。

町内会のような日々の身近なところでも、高齢化の問題は生じて来ますよね。町内のゴミ置き場を利用する場合は、町内会に加入して会費を納めるのが当然だと思うのですが、任意になっているのですか?

この「いつまで残暑」も、一応明日で一区切りとなる予報です。そうなると、どどーッと疲れが出そうです。気をつけてお過ごしくださいませ。

No title

私が子供の頃は、60歳定年が当たり前でした。後期高齢者に属する曾祖母が、大変なお年寄りに見えたものです。今では、80歳を過ぎてもまだまだ元気な方も多く、昭和の時代より、20才は若くなっているように思います。医療の充実、介護に関する意識の向上、何より、日本人に、自分の人生に目を向けるだけの余裕が生まれてきたせいかも知れません。
とは言え、社会の変容によって、家族の形も地域のあり方も大きく変わりました。新たな問題も山積みです。長生きだけに力点を置くのではなく、健康で、豊かに生きるための知恵が求められているように思います。
「源氏物語」は壮大で奥が深く、示唆に富む作品です。長い人生を支える滋味に溢れています。愛好者が増えて、お仲間との交流が盛んになれば、活気ある日々にも繋がりましょう。いろいろな意味で、日本人にとって、大切な宝だと思います。
持ち前の「色好み」ぶりを発揮し、応酬を楽しみながら、しっかり面接テストを行うあたり、源氏はイマドキの面接官の力量を遙かに凌いでますね。

No title

吹木 文音 さま

コメントを有難うございます。

本当にそうですよね。曾祖母が、昭和20年代の終わり頃に84歳で他界した時、周りから「長生きなさって」という声が上がっていたのを、幼い子どもだった私も記憶しています。今、84歳では女性はまだ平均寿命にも達していません。この70年の間に、それだけ高齢化が進んだということでしょうね。

でも、ただ寿命を延ばすだけでは意味はないですよね。「長生きだけに力点を置くのではなく、健康で、豊かに生きるための知恵が求められている」、まさにその通りだと思います。いわゆる「健康寿命」を延ばす必要性を、とくに後期高齢者も来年に迫っている私など、切実に感じます。

『源氏物語』の講読を通して、「活気ある日々にも繋がり」を生み出せる一助となるなら、それはもう私にとって、この上ない幸せですね。

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