初めて垣間見た浮舟の印象
2023年9月25日(月) 溝の口「湖月会」(第172回)
ようやく秋の訪れが感じられるようになって三日目。明日からは
また気温が上昇して、木曜日は再び真夏日(それも猛暑日に
近い)となる予報です。やっとエアコンの出番も終わったかな?
と思っていましたが、まだ数回は覚悟しておいたほうがよさそう
ですね。
今月は、第2金曜日クラスの例会が、台風で中止となったため、
同じ箇所を読んでいるこちらのクラスへの振替受講を選択なさ
った方が14名おられ、いつもの少人数の講読会とは異なり、
とても賑やかになりました。
そんな中で、第49帖「宿木」を読み終えました。それも私にしては
珍しく時間内にピタッと( ´艸`)
「宇治十帖」の中で最も長い「宿木」の巻ですが、本日講読した
最後の場面の舞台は宇治で、薫が、偶然八の宮邸に来合わせた
浮舟を垣間見て、心惹かれる様子が描かれています。
4月20日過ぎ、薫は、八の宮邸の寝殿を解体し、宇治の山寺へ
御堂として移築する工事の進捗状況の確認に出掛け、その足で、
今も八の宮邸に残っている弁の尼の許に立ち寄ります。
そこへ長谷寺に参詣した帰途、八の宮邸で中宿りをするために、
浮舟の一行がやってきました。
薫は、襖の穴から、腰が痛くなるまで熱心に浮舟の姿を見つめ
ます。先ずは、牛車から降りてくる浮舟の容姿が、ほっそりとして
上品で、「いとよくもの思ひ出でられるべし」(とてもよく亡き大君が
思い出されるようだ)とあります。
その後、弁の尼が挨拶に来て、浮舟は、弁の尼と向き合うのを
恥ずかしがって横を向いたため、薫からはとてもよく見えるように
なりました。「ただそれと思ひ出でらるる」(ただもう大君がそこに
居るように思い出される)ので、「涙おちぬ」(涙がこぼれ落ちた)
のでした。
薫は、浮舟との邂逅が嬉しく、すぐに傍に寄って「世の中におはし
けるものを」(あなた〈大君〉は生きていらしたのですね)と言いたく
なる程で、大君本人ではないけれど、「なぐさめ所ありぬべきさま
なり」(きっと心慰められるに違いない様子である)と、感じてお
ました。
こうしてみると、薫が浮舟に求めているのは、一目瞭然、大君の
身代わりということがわかりますね。浮舟自身ではありません。
あくまで大君の「形代(かたしろ)」として薫の中に位置づけられた
浮舟が、この先どのような運命を辿ることになるのか、いよいよ
次回の第50帖「東屋」から、浮舟をヒロインとした物語が始まります。
ようやく秋の訪れが感じられるようになって三日目。明日からは
また気温が上昇して、木曜日は再び真夏日(それも猛暑日に
近い)となる予報です。やっとエアコンの出番も終わったかな?
と思っていましたが、まだ数回は覚悟しておいたほうがよさそう
ですね。
今月は、第2金曜日クラスの例会が、台風で中止となったため、
同じ箇所を読んでいるこちらのクラスへの振替受講を選択なさ
った方が14名おられ、いつもの少人数の講読会とは異なり、
とても賑やかになりました。
そんな中で、第49帖「宿木」を読み終えました。それも私にしては
珍しく時間内にピタッと( ´艸`)
「宇治十帖」の中で最も長い「宿木」の巻ですが、本日講読した
最後の場面の舞台は宇治で、薫が、偶然八の宮邸に来合わせた
浮舟を垣間見て、心惹かれる様子が描かれています。
4月20日過ぎ、薫は、八の宮邸の寝殿を解体し、宇治の山寺へ
御堂として移築する工事の進捗状況の確認に出掛け、その足で、
今も八の宮邸に残っている弁の尼の許に立ち寄ります。
そこへ長谷寺に参詣した帰途、八の宮邸で中宿りをするために、
浮舟の一行がやってきました。
薫は、襖の穴から、腰が痛くなるまで熱心に浮舟の姿を見つめ
ます。先ずは、牛車から降りてくる浮舟の容姿が、ほっそりとして
上品で、「いとよくもの思ひ出でられるべし」(とてもよく亡き大君が
思い出されるようだ)とあります。
その後、弁の尼が挨拶に来て、浮舟は、弁の尼と向き合うのを
恥ずかしがって横を向いたため、薫からはとてもよく見えるように
なりました。「ただそれと思ひ出でらるる」(ただもう大君がそこに
居るように思い出される)ので、「涙おちぬ」(涙がこぼれ落ちた)
のでした。
薫は、浮舟との邂逅が嬉しく、すぐに傍に寄って「世の中におはし
けるものを」(あなた〈大君〉は生きていらしたのですね)と言いたく
なる程で、大君本人ではないけれど、「なぐさめ所ありぬべきさま
なり」(きっと心慰められるに違いない様子である)と、感じてお
ました。
こうしてみると、薫が浮舟に求めているのは、一目瞭然、大君の
身代わりということがわかりますね。浮舟自身ではありません。
あくまで大君の「形代(かたしろ)」として薫の中に位置づけられた
浮舟が、この先どのような運命を辿ることになるのか、いよいよ
次回の第50帖「東屋」から、浮舟をヒロインとした物語が始まります。
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コメント
No title
No title
夕鶴さま
いつも講読会後のコメントをお寄せ頂き、有難うございます。
ウジウジと(笑)長かった「宿木」も、ここで読み終えることが出来ました。
昨日の講読箇所は、これから始まる「浮舟」の物語のプロローグとも言うべき場面で、薫の浮舟に対する意識(=大君の形代)の確認をさせられた感じでしたね。
薫が浮舟に直接歌を贈ろうとしないのも、受領の継娘風情に言い寄っては世間体が悪い、と、薫のプライドの高さが許さないからなのです。
「そのプライドの高さと優柔不断さがこの後に影響して、物語が進んでいきそうです」←まさにおっしゃる通り。
薫とは対照的な性格の、自分の情熱の赴くままに行動する匂宮が絡んできて、昔物語とは思えない、近代小説的な心理劇を展開してゆく浮舟の物語、目が離せませんね。
引き続き、よろしくお願い申し上げます。
いつも講読会後のコメントをお寄せ頂き、有難うございます。
ウジウジと(笑)長かった「宿木」も、ここで読み終えることが出来ました。
昨日の講読箇所は、これから始まる「浮舟」の物語のプロローグとも言うべき場面で、薫の浮舟に対する意識(=大君の形代)の確認をさせられた感じでしたね。
薫が浮舟に直接歌を贈ろうとしないのも、受領の継娘風情に言い寄っては世間体が悪い、と、薫のプライドの高さが許さないからなのです。
「そのプライドの高さと優柔不断さがこの後に影響して、物語が進んでいきそうです」←まさにおっしゃる通り。
薫とは対照的な性格の、自分の情熱の赴くままに行動する匂宮が絡んできて、昔物語とは思えない、近代小説的な心理劇を展開してゆく浮舟の物語、目が離せませんね。
引き続き、よろしくお願い申し上げます。
No title
身代わりにされた側は、それを知ってしまうと、自分を否定されたような気持ちにもなり、とても辛いですね・・・・
自己中心的な考えをそのまま行動に移されると、周りも困惑してしまいますね。
自己中心的な考えをそのまま行動に移されると、周りも困惑してしまいますね。
No title
utokyoさま
コメントを有難うございます。
浮舟は、最初から「あなたは大君の身代わりなんですよ」と宣言されているようなものでしたが、本当に自分を愛してくれる人にそれまで会ったことが無かったので、わからなかったのでしょう。それが、匂宮を知り、愛とはこういうものか、と気づいたとき、心の揺れが生じることになります。
浮舟は運命に翻弄されるヒロインとして造型され、読者も人の生き方について、あれこれと考えさせられることの多い女君だと思います。
コメントを有難うございます。
浮舟は、最初から「あなたは大君の身代わりなんですよ」と宣言されているようなものでしたが、本当に自分を愛してくれる人にそれまで会ったことが無かったので、わからなかったのでしょう。それが、匂宮を知り、愛とはこういうものか、と気づいたとき、心の揺れが生じることになります。
浮舟は運命に翻弄されるヒロインとして造型され、読者も人の生き方について、あれこれと考えさせられることの多い女君だと思います。
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ただ、今週の後半は日中かなり暑くなりそうですが^^;
それでも確実に季節は変わっていくことにホッと致します
「宿木」はいよいよ最終回となり、薫が浮舟を垣間見ることが出来ました
襖の穴から腰が痛くなるほど見続ける姿は、なんとも可笑しく、薫の気持ちが伝わってきます
浮舟は、弁の尼君から聞いた通り、亡き大君にそっくりでした
薫は涙を流します
先生がおっしゃったように、最初から薫にとっては、浮舟はあくまでも大君の「形代」です
蓬莱山まで方士を遣わして、楊貴妃の形見の釵だけを得て、それをご覧になった玄宗皇帝は、さぞかし残念に思われたことだろうと
この人は大君とは別人だけれど、心を慰められる存在に違いないと思うところが薫の本心ですね
ただ、身分の低い浮舟に、世間体を憚ってすぐに会いに行こうとしません
そこが匂宮と違うと先生がおっしゃいました
そのプライドの高さと優柔不断さがこの後に影響して、物語が進んでいきそうです
「東屋」からの展開、楽しみにしております♡