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景情一致の名場面

2016年6月13日(月) 溝の口「紫の会・月曜クラス」(第3回)

「梅雨寒」というのでしょうか、今日は気温も低く、細かい雨が降り続く
一日となりました。

「桐壺」の巻の3回目、靫負の命婦が、帝の使者として、亡き桐壺の更衣の
里邸を弔問する場面を読みました。

この場面は、古来「景情一致」の名場面として知られています。

「景情一致」とは、景色とその場にいる人物の心情とが共鳴して、深い感動を
呼び起こすことを言いますが、先ず導入部の、

「野分だちて、にはかに膚寒き夕暮のほど、常よりもおぼしいづること多くて、
靫負の命婦といふをつかはす。夕月夜のをかしきほどにいだし立てさせたまひて、
やがてながめおはします。」(野分めいた風が吹いて、急に肌寒くなった夕暮時、
帝はいつもより思い出されることが多くて、靫負の命婦という女房を、更衣のお里
にお遣わしになりました。夕月の美しい時刻に出立させなさって、帝はそのまま
物思いに耽っていらっしゃいます。)

これだけでも「景情一致」は、十分におわかり頂けるのではないかと思います。

娘に先立たれ、もう庭の手入れなどもする気力が失せ、雑草が伸び放題に
なっているところへ、追い打ちをかける台風のような風。荒れた宿が一層
物寂しく感じられるのですが、月の光だけが、その雑草にも遮られずに
差し込んでいます。この「景」の中で、生きる希望も失い、日々を涙がちに
送っている亡き更衣の母と、帝からの手紙を携えた使者(靫負の命婦)とが
対面するのですから、もうここはぜひ原文を音読して、「景情一致」を存分に
味わって頂きたいと思います。

この後、今回読んだところの全文訳の前半をUPしますので、原文で読まれる
時の内容理解の一助となれば幸いです。

後半の全文訳は、23日(木)のクラスで読んだ後、掲載します。

最後に、後半部分になるのですが、靫負の命婦が後ろ髪を引かれる思いで、
帰ろうとしてしている部分を挙げておきます。「景情一致」をしみじみとどうぞ。

「月は入りかたの空清う澄みわたれるに、風いと涼しくなりて、草むらの虫の
声々もよほし顔なるも、いと立離れにくき草のもとなり」(月が山の端に沈む
頃で、空は清く澄み切っているものの、風がとても涼しくなって、草むらの
様々な虫の声も、まるで一緒に泣け、と言っているかのようで、命婦にとっては、
立ち去りがたいこの草の宿でありました)


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