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第二帖「帚木」の全文訳(10)

2017年2月23日(木) 溝の口「紫の会・木曜クラス」(第11回・№2)

本日読みました「帚木」の巻(80頁・10行目~87頁・9行目まで)の
後半に当たる部分(84頁・13行目~87頁・9行目)の全文訳です。
(頁・行数は、「新潮日本古典集成本」による)

紀伊守の子供たちが、可愛らしい様子でいます。殿上童で、源氏の君が
殿上の間で見馴れていらっしゃる子供もいます。伊予の介の子供もいます。
大勢いる中で、たいそう雰囲気が上品で、十二、三歳位の少年もいました。
「どれが誰の子供なのか」など源氏の君がお尋ねになると、「これは、亡き
衛門の督の末子で、とても可愛がっておりましたが、幼くして父に先立たれて、
姉の縁でこうしてここに居るのでございます。学問などもできそうな子で、
見込みもあり、殿上童になることも望んではおりますが、すらすらと出仕は
叶わないようでございます」と、紀伊守は申し上げます。「可哀想に。この子の
姉が君の継母になるのかね」と問われ、「はい、さようでございます」と紀伊守
が答えますと、「不似合いな若い母親を持ったものだね。帝も入内の希望は
お聞きになっていて、『衛門の督が娘を入内させたいとそれとなく奏上した話は、
どうなったのだろう』と、いつぞやおっしゃっていました。男女の縁というものは、
わからないものだな」と、源氏の君はひどく大人びた口をおききになります。
「はからずも父に縁付くことになったのでございます。男女の仲というものは
、こうしたもので今も昔もどうなるか分かったものではございません。とりわけ
女の運命は定めないのが気の毒でございます。」などと、紀伊守は申し上げ
ます。「伊予の介は、その後妻を大事にしているのか。主君のように思っている
ことだろうな。」とおっしゃる源氏の君に、紀伊守は「それはもう。私的には主人
と思っているようですが、好色がましいことだと、私をはじめ子供たちは皆、
承知いたしておりません」と申し上げました。「そうは言っても、君たちのような
年齢的に釣り合いのとれる今風の若者に下げ渡したりするものかね。伊予の介
は、なかなかたしなみのある気取り屋だからなぁ」などとお話しなさって、
「女たちはどこに居るのか」とお聞きになるので、「みな下屋に下がらせました。
全部は下がり切れずにいるかもしれません」とお答えしました。酔いが回って、
供人たちは皆、簀子に横になって静かになりました。

源氏の君は落ち着いてお休みにもなれず、空しい独り寝かとお思いになると、
目が冴えて、この北の襖の向こう側に人の気配がするのを、「こちらだろうか、
さっきの話に出た人が隠れているところは。かわいそうに」と心が惹かれて、
そっと起き上がって立ち聞きをなさっていると、先程の子供の声で「もしもし、
どこにいらっしゃいますか」と、かすれた可愛い声で言うのが聞こえて来て、
「ここで寝ているわよ。お客様はお休みになりましたか。どんなに近くで
お休みになるのかと思っておりましたが、だいぶ離れているようね」と、
言っております。もう寝ていた声のけだるい調子が、この子の声とよく似て
いるので、「姉だな」と聞いておられました。小君が「廂の間でお休みになり
ました。評判のお姿を拝見しましたが、本当に素晴らしいご様子でした」と、
ひそひそと告げています。「昼間だったら、覗いて拝見するのだけど」と、
眠そうに言って、夜具に顔を引き入れる音がします。

「悔しいなぁ、もっと気を入れて訊いてくれればいいのに」と、つまらなく
お思いでした。小君は「私は端で寝ましょう。ああ疲れた」と言って、灯心を
掻き上げたりしているようです。空蝉は、すぐ近くの襖の出入り口の斜め向こう
の辺りに、寝ているようです。空蝉が「中将の君はどこにいるの。誰も傍に
居ないようでなんだか怖いわ」と言うようなので、下長押の下で横になって
いる女房たちが「下屋にお湯を使いに行って、『すぐに参上いたします』との
ことでございます」と答えていました。


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