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平安京の庶民の生活

2017年8月14日(月) 溝の口「紫の会・月曜クラス」(第17回・№2)

今日も最高気温が30度に達せず、あの猛暑日のお詫びをしている
のかな、と思われるようなここ数日の涼しさです。

「源氏物語」は平安時代の上流貴族社会を描いた物語ですので、
物語の中に庶民の生活が描かれることはほとんど無いのですが、
ここは珍しく、平安京に住まう庶民の生活を事こまかく描写している
場面が出てきます。

八月十五日の夜、源氏は夕顔の宿に泊まりました。中秋の名月の光が、
板葺きの屋根の隙間から、射し込んできます。源氏のような貴族の
お邸の屋根は檜皮葺ですから、月の光が天井から射し込んで来ること
などあり得ません。

明け方近くになると、この年は冷夏だったのでしょうか、不作でさっぱりだ、
などと、近隣の男が大きな声で北隣の家に話しかけているのが聞こえて
来ます。

精米に使う「唐臼」の音が、雷のゴロゴロという音よりもうるさく聞こえて
何の音かも分からぬまま、これには源氏も閉口なさっています。

ただ、砧を打つ音や雁の声、といった風情あるものも身近に感じられる
のでした。

一番面白いのは、住まいのレベルの違いを、「壁のなかの蟋蟀だに
間遠に聞きならひたまへる御耳に、さしあてたるやうに鳴き乱るるを」
(いつもは壁の中で鳴いている蟋蟀でさえ、遠くで鳴いているように
聞き慣れていらっしゃる御耳に、ここでは庭の虫の声が、まるで耳に
押し付けたかのようにうるさく鳴いているのを)と、ややユーモアを
持って書いているところでしょう。

さすがに源氏は、ここでの逢瀬は落ち着かなくて「いざ、ただこのわたり
近き所に心安くて明かさむ。かくてのみはいと苦しかりけり」(さあ、
この辺りに近い所で、気楽に夜を明かそう。こんな所でばかり逢うのは
やりきれないよ)と、夕顔を某院へと連れ出そうとなさいます。

これが、「恐怖の恋のアバンチュール」になるなんて、源氏は全く思っても
いません。でも、夕顔には悪い予感があったような気がいたします。

詳しくは、この下に書きました全文訳をお読みいただければ、と存じます。


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