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大君への恋の始まり

2017年8月16日(水) 湘南台「源氏物語を読む会」(通算192回 統合46回)

梅雨の頃は晴天が続き、真夏の水不足が懸念されたのですが、
8月に入ってからは、日照時間の不足による農作物への影響が
案じられるようになりました。この逆転の現象、やはり「異常気象」
と言うべきなのでしょうね。

今回、このクラスは、第45帖「橋姫」の中盤、「国宝・源氏物語絵巻」
にも描かれている、「橋姫」の中で最も有名な、薫が初めて宇治の
大君と中の君姉妹の姿を垣間見る場面から読みました。

   国宝「源氏物語絵巻」・橋姫
           国宝・源氏物語絵巻「橋姫」

この場面についての説明は、2016年10月6日の記事に書きましたので、
そちらをご参照ください。

今日は、これまで「山里に思いも掛けない美女の発見」など、虚構の
昔物語の世界のことでしかない、と思っていた薫が、垣間見によって
現実にもあることを知り、姫君たちに挨拶をしたいと、アプローチする
ところをご紹介したいと思います。

薫が宇治に通い始めて既に足掛け三年が経っているにもかかわらず、
その間殆ど興味を覚えることもなかった姫君たちの存在が、この垣間見を
境に大きく変化し、「宇治十帖」は恋の物語へと舵を切り始めます。

八の宮邸の若い女房たちは、京の貴公子の応対などしたこともないので、
簀子に薫を座らせ、御茵(お座布団)を出す手つきも様になりません。
薫は御簾の内(廂の間)にも入れて貰えない不満を訴えますが、それに
お返事できるような女房も傍にはおらず、仕方なく大君がお相手をします。

「何事もわきまえぬ私どもでございますので、わかったようなお返事を
どうして申し上げられましょう」と言う大君の、奥ゆかしさ、気品ある声に、
薫はグッと心惹かれ、「なほかく忍びあまりはべる深さ浅さのほども、
分かせたまはむこそかひははべらめ」(やはりこうして心の中に秘めて
おくことが出来ない私の気持ちの程が、深いか浅いか、分かって頂けて
こそ、甲斐があるというものでございましょう)と、女を口説く場合の
常套句を口にしますが、そのあとすぐに「世の常のすきずきしき筋には、
おぼしめし放つべくや。さやうのかたは、わざとすすむる人はべりとも、
なびくべうもあらぬ心強さになむ」(世間によくある色めいたこととお考え
下さいますな。そのような色恋沙汰はわざわざ勧める人があったとしても、
なびかぬ決心をしておりますので)と、自分の好き心を否定してしまいます。

薫という人は、これから先もこのような中途半端な態度が目に付きます。
心から自分をさらけ出すことが出来ないタイプなのです。この辺りが匂宮とは
対照的です。

そういう意味では、薫は現代の青年に近いのかもしれません。


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