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巧みな匂宮の慰め術

2019年2月20日(水) 湘南台「源氏物語を読む会」(第210回)

今日は気温が20度近くまで上がり、4月の陽気とのことでしたが、
まだまだ油断はできませんね。

湘南台クラスは第48帖「早蕨」の2回目。大君を失った薫の心は、
年が明けても晴れることなく、新年の行事が一段落したところで、
匂宮を訪ね、胸一つに収めかねる悲しみをしみじみと語るのでした。

初めて月明りの中に大君の姿を垣間見てから(この時は、京に戻った
薫は匂宮に自慢気に宇治の姫君たちの話をして聞かせました)、昨年
冬に大君が亡くなるまでの三年ほどの間のこと、そして今も大君への
思慕の念が絶えない旨を綿々と訴える薫に対し、多情多感な匂宮は、
たとえ他人のことであっても、袖も絞るほどに涙を流し、話甲斐のある
お相手をなさるのでした。

夜も更けて強くなった風が灯りを吹き消してしまっても、お二人は話を
切り上げることなく、心ゆくまで語り合われました。

「ものに心えたまひて、嘆かしき心のうちもあきらむばかり、かつは
なぐさめ、またあはれをもさまし、さまざまにかたらひたまふ御さまの
をかしきに」(物事をよくおわきまえで、悲しみに沈む薫の心の内も
すっきりとするほどに、一方では慰め、また一方では悲しみを忘れ
させようと、あれこれと親身になってお話なさるご様子の巧みさに)
と、聞き上手な匂宮の姿が描写されています。

そんな匂宮に乗せられるようにして、薫も、心の内にわだかまっていた
ものを徐々に吐き出し、「こよなく胸のひまあくここちしたまふ」(この上
なく胸が晴れる気がなさる)のでした。

お育ちの良さから来る鷹揚さと、目の前に居る相手の気持ちに寄り
添おうとする姿勢(これは多くの女性関係の中で培われて来たもの
かと思われる)が、こうした匂宮の人柄を作り上げたのでありましょう。

匂宮に心を寄せたくなる女性の気持ち、この場面からもわかる気が
します。


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コメント

No title

なるほどー。匂宮は、相手の気持ちに寄り添おうとする姿勢を持った聞き上手な方なのですね。浮舟さんが、匂宮に溺れたのも仕方ないですかね。
薫と匂宮、、私だったらどっちがいいかなー?(OvO)
消去法でしか考えられません。。匂宮にしときます。
アホなコメントですみません!

No title

ば~ばむらさきさま。こんにちは。お元気でご活躍の様子、拝読いたしました。

“物の枯れゆくやうにて”大君が亡くなってしまいました。

ジグザグ陽気とはいえ2月初旬は寒く、こちらでは2度雪が積もり、震えました。秋から冬の宇治はどんなに厳しい寒さ、寂しさでしたでしょう。唯一の頼りであった父を失った姫たちの心細さが胸に迫ってきました。

「総角」は、若い男女4人の心理が絡み合い、深化しているので理解するのが難しかったです。特に薫と大君には、深い自己省察があり、その気持ちは複雑で近代的だと思いました。

薫と大君は、結局は本来の意味での夫婦にはなりませんでしたが、二人の間には、長い時間をかけて醸成された「情」と信頼があったと思います。まるで男女の仲を超えた老夫婦みたいに。

大君は長女だなぁ、としみじみ思います(私は次女です)。真面目さ、責任感、一種のかたくなさ、痛々しいぐらいです。でも、中君のことは望むようにはいきませんでしたが、ほかは自分の生き方を貫いたと言えるでしょう。男女の葛藤や愛憎の中に身を投じず(リスクをとらず)、早く父の元に行くこと。現に薫は大君を憎めず、イヤなところを探して気持を少しでも楽にしたいと思ってもだめでした。遺骸の髪からはふわっと生前のいい匂いさえ漂ってきます。薫はもう、どうしようもありません。それが良かったかどうかは分かりませんが、薫は薫で大君という女を「大切にする」ことを貫いたのは大したものだと思います。

シネマ歌舞伎の「阿古屋」は私も観ました。ば~ばむらさきさまの言われるように、あの映画は役者・玉三郎のすごさが印象に残りました。機会があれば、文楽で観てみたいです。

少し頭を整理してから“早蕨”に入ります。また、よろしくお願いいたします。

No title

ぴょもぎさま

こんばんは~。

薫と匂宮、やっぱり私も消去法で行くと(笑)、匂宮ですかしら?


12月6日の記事で、中の君の目を通した薫と匂宮の違いを書きました。

匂宮・・・ありもしないことにまで難癖をつけておっしゃるけれど、また多少の
心外なことがあっても、それを大目に見て許してしまわれるような所もお持ち
である。

薫・・・心で嫌だと思ったことを口に出されることはなくとも、恨みを忘れたりはしない。

ねちねちとした男は嫌ですものね。薫は一緒に居ると気が抜けなくて疲れそうだし(笑)。

こんなふうに登場人物を身近に引き寄せて読んで行くと、「源氏物語」も楽しい
と思います。

No title

萩原さま

こんばんは~。萩原さまのお住まいは暖かな所だと思っておりましたが、二度も雪が降ったのですね。

冬の宇治、一度行ってみたいです。宇治へは何度も足を運んでいますが、冬だけは行ったことが無く、冬の宇治橋や宇治上神社で「宇治十帖」の世界を体感してみたい(寒がりのくせに)と、憧れております。

「総角」を読み終えられて、この湘南台クラスの辺りまで追いついてしまわれましたね。

「早蕨」は短い巻で、次の「宿木」の巻に入ると、匂宮も薫も相次いで正妻を持ちます。薫の相手は今上帝の女二宮。たとえ大君が生存していても断ることは難しかったかもしれません。源氏も紫の上がありながら女三宮を迎えたのですから。

自分の命と引き換えに、妹を守り、宮家の誇りを守った大君は、この先生き延びて不本意ながら薫と結婚し、その薫が正妻を迎えるなどということになるよりも、ある意味幸せだったのかもしれない、と思うことがあります。

「浮舟」の物語になると、心理描写はますます深まって行きますので、息苦しくなるほど読み応えも出てまいります。もうすぐだと思いますので、引き続き読後感をお聞かせいただけるのを、楽しみにしております。

「文楽」の「阿古屋」はもうお薦め中のお薦めです。機会があれば是非どうぞ!

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