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「竹河」の巻の喪失感

2019年7月22日(月) 溝の口「湖月会」(第133回)

第2金曜日のクラスと足並みを揃えていますので、このクラスも今回で
「匂宮三帖」を読み終えました。「匂兵部卿」・「紅梅」・「竹河」と続いた
三帖ですが、中でも最もボリュームがありながら、異質性が散在して
いて、作者別人説の筆頭に挙げられているのが「竹河」の巻です。

これまでとは違う、故髭黒家に仕えた古女房たちの問わず語り、という
設定がされている巻ですが、大黒柱であった当主髭黒の急死によって、
残された玉鬘が、二人の娘の行く末を案じ、特に大君の結婚に関して
心を砕くところから物語が始まります。

結局玉鬘は大君を冷泉院に院参させました。嘗て自分が望まれながら
叶えて差し上げられなかった院の思いに応えるような選択でした。

でもそれは誤算としか言いようのない結果へと繋がって行きます。

大君がなまじ冷泉院の寵愛を受け、女宮に次いで男御子まで産むに
至って、弘徽殿の女御ら古くから院に仕えている勢力から疎外され、
里がちになってしまいます。髭黒との約束を反故にされた帝もご機嫌
を損ねられ、誰よりも熱心に求婚していた蔵人少将(夕霧と雲居雁の
息子)を袖にしたことで、夕霧家との間にも気まずさが残りました。

それだけではなく、息子たちの昇進もままなりません。上手くすれば、
官僚としての出世にも希望の持てる帝への入内を勧めていたにも拘らず、
母親(玉鬘)が大君を院参させてしまったので、案の定、二人の息子は
参議にもなれずにいます。あの頼りないお坊ちゃまの蔵人少将でさえ、
宰相中将(宰相は参議と同義)になっているというのに。

末っ子の侍従も、頭中将という年相応の役職には就いていますが、
同時期に侍従であった薫が、既に中納言であることを思うと、その差は
歴然です。強力な後ろ盾を持たない髭黒家の息子たちの悲哀が語られた
ところで、「竹河」の巻は幕を閉じています。

次回からはいよいよ「宇治十帖」に入ります。ここで一旦澱んでしまった
感もある「源氏物語」が、また一気に精彩を取り戻してきますので、
その心理小説的な世界観を存分に味わっていただきたいと思います。


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コメント

今週あたり、梅雨明け宣言があるとのこと
関東では長く続いた梅雨のせいで、日照不足が心配されますし、7月しては気温が低かったためか体調を崩す人が多く、風邪が大流行しているとか

前回から入った「竹河」ですが、先生のご説明をお聞きすればするほど、違和感を感じる巻です

そもそもあの聡明な玉鬘が、大事な娘のお相手として冷泉院を選ぶでしょうか?
冷泉院の熱心な院参のお勧めや、弘徽殿の女御からの勧めがあったとしても
ただ、当時の貴族の結婚はそれだけ難しいということかもしれませんね
もし、髭黒右大臣が生きてらしたら、入内させれば良かったわけですから

しかし、先生も指摘された、玉鬘が大君の里下がりが多くなっていることを、院にとりなしてもらおうと薫を呼んで相談した時の薫の反応!
思慮深くまめ人で、まして姉弟のように仲の良い玉鬘に対して、そんな冷淡な態度をとるとは考え難いです
もっと親身になって悩みを聞き、自分が力になれることを考えるのではないでしょうか
その上、玉鬘の若々しくおっとりとした様子に、八の宮の姫君のことを考えるとか
あまりにも唐突で、違和感を通り越して不快感を感じてしまいます

夕霧一族の官位の昇進の件も、非常におかしいですね

ただこの巻は、最初に髭黒右大臣家に仕えた古女房の語りとして始まることから、間違っていても仕方ありませんと、逃げ道を作っているのかもしれません

やはり、作者別人説を支持いたします(^_^)v

次回からの「宇治十帖」とても楽しみです♡

No title

夕鶴さま

お忙しいところを、丁寧なコメントを頂戴し、有難うございます。

捜せば次から次へと違和感を覚える箇所が出て来る「竹河」ですが、人生についてあれこれと思いを巡らす材料を提供してくれている巻でもありましたね。

「宇治十帖」は、正編ほど登場人物の関係が複雑ではなく、心理描写の多用で、今の小説に近くなっていますので、「宇治十帖が一番面白い」という声もよく耳にいたします。

残り十帖、更なる深化を遂げる「源氏物語」を、ご一緒に楽しんでいただければ幸いです。この先もよろしくお願いいたします。

ようやく梅雨明けのようですが、身体が暑さに慣れていないので、覚悟が必要ですね(笑)

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