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野分のまたの日

2019年8月16日(金) 溝の口「枕草子」(第35回)

台風10号の本体は既に遠ざかっているのですが、進路が直線ではなく、
大きな半円を描くような形になったので、今日は一日中強風域から出る
ことが出来ず、関東では風が吹き荒れました。明日からはまた猛烈な
暑さになるそうです。いやはや疲れますね。

今回の「枕草子」は、第181段から第188段までを読みましたが、意図した
わけでもないのに、何ともタイムリーな「野分のまたの日(台風の翌日)」の
ことを書いた段(188段)が含まれていました。

その冒頭部分です。

「野分のまたの日こそ、いみじうあはれに、をかしけれ。立蔀、透垣などの
乱れたるに、前栽どもいと心苦しげなり。大きなる木どもも倒れ、枝など
吹き折られたるが、萩・女郎花などの上に、横ろばひ伏せる、いと思はず
なり。格子の壺などに、木の葉をことさらにしたらむやうに、こまごまと
吹き入れたるこそ、荒かりつる風のしわざとはおぼえね。」
(台風の翌日はとってもしみじみとした趣があるわね。立蔀や透垣などが
乱れている上に、庭の植え込みなどもすごく辛そうな感じ。大きな木々も
倒れ、枝などの風に吹き折られたのが、萩や女郎花などの上に横倒しに
なっている様子は、もう想定外の光景よ。でも、格子の枠組みの一マス毎
に木の葉を、わざと嵌め込んだかのように、いちいち念入りに吹き入れて
あるのは、荒々しかった風の仕業とは思えないわ。)

特に秀逸なのは、「格子の壺などに」以下の部分です。格子の枠の一マス
一マスに、風によって舞い散った木の葉の貼り付いている様子が、わざと
手を加え、一枚ずつ嵌め込んだのではないか、と思わせる芸術性を醸し
出している、というもの。

「源氏物語」の「野分」の巻にも、野分(台風)の翌朝の様子を記した場面が
あります。文学的情趣に富んだ表現となると、紫式部に軍配が上るでしょうが、
この見事な観察眼と、小粋な表現は、紫式部には無い、清少納言独自のもの
でありましょう。


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