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第9帖「葵」の全文訳(2)

2019年8月22日(木) 溝の口「紫の会・木曜クラス」(第41回・№1)

第2月曜日のクラスと同様に、こちらのクラスも今月から第9帖「葵」に
入りました。今日は65頁・1行目~69頁・10行目を読みましたが、その
前半部分(65頁・1行目~67頁・11行目迄)の全文訳は、8月12日に
書きましたので➞「第9帖「葵」の全文訳(1)」、今回は残りの後半部分
(67頁・12行目~69頁・10行目迄)です。

(頁・行数は、「新潮日本古典集成本」による)


左大臣家の葵の上は、このような源氏の君の浮気なお心を面白くないと
お思いですが、余りにも大っぴらなご様子が、お話にもならないからで
ありましょうか、深くもお恨み申し上げなさいません。ご懐妊のため、
お辛い様子でご気分もすぐれず、心細げにしておいででした。

葵の上のおめでたを、源氏の君も珍しく、いとしいと、お思いになって
おられました。左大臣家では、どなたも皆嬉しいものの、不吉な場合の
ことなども案じられて、さまざまな物忌みをおさせになるのでした。

こうした間、源氏の君はいっそうお心が休まる時とて無く、御息所のことを
疎かにするおつもりはないのですが、途絶えが多くなっていたことでござい
ましょう。

そのころ、斎院も退下なさって、替わって弘徽殿大后腹の女三宮がお立ち
になりました。桐壺院と大后が、とても大切になさっている宮なので、斎院と
いう特別なご身分におなりになるのを、たいそう辛くお思いでしたが、他の
宮には適当な方がおいでにならず、儀式などは規定通りの神事なのですが、
盛大で世間も騒いでおりました。

賀茂の祭の折には、規定の公的行事の他に加わることも多く、見所もこの上
ないものでした。これも斎院のご人徳によると思えました。

御禊の日は、上達部などが決められた人数で供奉なさる行事ではありますが、
声望が格別で、容貌の美しい方ばかりが選ばれ、下襲の色、表の袴の紋、
馬の鞍までも、みな立派に整えられました。特別の勅命により、源氏の君も
供奉なさることになりました。それを見物しようと、物見の牛車の準備を
人々はしておりました。

一条大路は、ぎっしりと物見車が立て込んで怖い程に大騒ぎになっています。
所々に設けられた桟敷は、それぞれが精一杯趣向を凝らした飾りつけや、
女房たちの出衣までもが、たいそうな見物となっておりました。

葵の上は、このような祭見物などへのお出かけもほとんどなさらない上に、
今はご懐妊中でご気分も悪いことなので、そのおつもりもなかったのですが、
若い女房たちが、「さあ、どうしたものでしょう、私たちだけでこっそりと見物
するのでは、冴えないことですわ。普通の人でさえ、今日の見物には、
大将殿(源氏の君)を目当てに、賤しい田舎者までもが拝見しようとしている
らしいのです。遠い地方から妻子を引き連れて京までやって来ると言うのに、
奥方さまがご覧にならないのは、あんまりなことではございませんか」と
言うのを、大宮がお聞きになって、「今日はちょうどご気分も良さそうです。
あなたが行かないと、女房たちもつまらないようですよ」と言って、急に
牛車のご用意のお触れをお回しになって、見物なさることになりました。


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