fc2ブログ

鮮烈な印象

2019年11月15日(金) 溝の口「枕草子」(第38回)

今日の「枕草子」は、第207段~第219段までを読みました。

先月のブログでは、新緑の頃、清少納言が牛車に乗って山里を
散策する様子を記した、第206段の最後の2行をご紹介しました。

牛車の車輪におしつぶされた蓬が車輪にくっついて、乗っている
作者の顔近くに廻って来ると、蓬の香りがふわーっと伝わってくる
のを「をかし」(素敵だわ)、と捉えている鋭い感性と表現力が、
卓越した一文でした(こちらからどうぞ→「この感性!」)。

今回読んだ第215段は、全体で2行しかない短い章段ですが、やはり
そこには作者・清少納言の天賦の才が遺憾無く発揮されています。

「月のいと明きに、川を渡れば、牛の歩むままに、水晶などの割れたる
やうに、水の散りたるこそ、をかしけれ」(月が煌煌と照って明るい中を、
牛車に乗って川を渡ると、牛が歩むにつれて、水晶が割れ砕けたかの
ように、水が飛び散っているのが、すごく素敵!)

他に明りがないだけに、月明りの照らすものはいっそう美しく見えたと
思われますが、月光を受けて輝く水しぶきを、水晶の砕け散る姿に
譬えた形容の妙が、古来この一文を名文と言わしめている所以で
ありましょう。動的な美が鮮烈な印象を与えます。

第206段では嗅覚、この段では視覚。そうした五感に感じたものを
逃さず鋭く描写しているところも、「枕草子」の大きな魅力ですね。


スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

訪問者カウンター