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薫にとっての浮舟の存在価値

2019年12月18日(水) 湘南台「源氏物語を読む会」(第220回)

昨日は寒い一日でしたが、今日は最高気温が20℃近くまで上がって
10月の陽気に。明日はまた真冬の寒さになるとのこと。師走に入って
からのこの気温の乱高下、一体どうなっているのでしょうか。

湘南台クラスは年内で第49帖「宿木」を読み終えたい、と思っており
ましたが、予定通りそこまで進みました。

「宿木」の最後で、初めて浮舟が姿を現します。薫が宇治に山寺の
御堂の工事状況を確認に行ったついでに、八の宮邸に一人残って
いる弁の尼を訪ねると、ちょうど初瀬詣の帰途、宇治に中宿りのため
やって来た浮舟一行と一緒になります。

中の君に存在を知らされ、弁の尼に素性を聞いた八の宮の隠し子と
偶然にも来合わせた薫は、腰が痛くなるまで、立ったまま身じろぎも
せず(襖の向こうにいる浮舟に気配を悟られないよう、細心の注意を
払っている)、襖の穴から浮舟を観察し続けます。なるほど大君に姿
かたちがとてもよく似ています。

「ただ今もはひ寄りて、『世の中におはしけるものを』と言ひなぐさめまほし」
(今すぐにでも側に寄って、「あなたは生きていらしたのですね」と言って
なぐさめてあげたい)と、浮舟の中に薫が見ているのは亡き大君です。

玄宗皇帝は楊貴妃の魂だけしか探し当てることが出来なかったけれど、
この人は大君とは別人でも、心を慰めることが出来るほどよく似ている、
と薫は考えます。

そして弁の尼と会った後、わざと独り言のようにして、

「貌鳥の声も聞きしにかよふやとしげみをわけて今日ぞ尋ぬる」(大君に
似た美しい人の声も、昔聞いた大君の声に似ているであろうかと、草の
茂みを分けて今日ここまで尋ねて来ました)

と歌を詠み、薫の意を体した弁の尼がこれを浮舟に伝えた、というところ
で「宿木」は終わっています。

中の君にその存在を告げられた時から、薫にとっての浮舟は、大君の
「形代」(身代わり)でしたが、垣間見しながら思っていることや、最後の
歌からしても、薫の中に浮舟自身の存在価値は皆無です。

このような形で登場した女君がどのような運命を辿ることになるのか、
いよいよ「宇治十帖」のハイライト、「浮舟」をヒロインとした物語が、
ここから始まります。


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