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父子二代で同じ悲しみ

2020年1月13日(月) 溝の口「紫の会・月曜クラス」(第46回・№2)

冬晴れの空が広がり、風もなく穏やかな成人の日となりました。

今日はあまり新年には相応しくないのですが、葵の上の七日七日
の法要も終わり、源氏が左大臣邸を去る日も近づいて来た頃の、
第9帖「葵」のしみじみとした場面が続くところを読みました。

葵の上を亡くした父・左大臣の悲しみは筆舌に尽くし難いものでした。
子どもに先立たれるほど辛いことはありません。ましてや葵の上は、
内親王腹の、左大臣家では誰よりも大切にされてきた娘でした。

そして、今はたった一人の同母妹(姉という説もありますが、一応
従来の説に従っておきます)を失った兄として、悲しみにくれながらも、
源氏を慰める役を演じている三位中将(もとの頭中将)の姿が描かれ
ています。

「源氏は左大臣夫妻への義理から、葵の上のもとに、いやいやながら
通って来ていたのであろうと思っていたが、この悲嘆ぶりに接している
と、やはり正妻として誰よりも大切に思っていたのだなぁ」と、改めて
葵の上の死を惜しんでいるのが、ここでの三位中将です。

これから26年後、既に致仕大臣となっている三位中将が、父と同じよう
に最愛の子供に先立たれます。それが柏木です。

「源氏物語」の表現力は、巻が進むにつれて進化しているのを、実感
させられることが多いのですが、「葵」の巻での左大臣と、「柏木」の巻
での致仕大臣の、子を失った嘆きを描いた場面に、それが如実に表れ
ています。

ちょうど来月、高座渋谷のクラスで、そこを読む予定ですので、その時に
詳しくお伝えしたいと思います。

今はまだ、悲しみの中にも余裕のある若い三位中将が、父と同じ立場に
なった時の描写は、もう読者も涙無くしては読めません。

本日講読したところの前半部分のストーリーは、先に書きましたこちら→
「葵」の全文訳(11)をご覧ください。


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