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第9帖「葵」の全文訳(15)

2020年8月17日(月)

この全文訳は、7月に「紫の会」木曜クラスの2月分の例会を会場で
読んだ時に書くつもりでしたが、7月の終わり頃には新型コロナの
感染が再び拡大して、会場での講読会は中止となり、残ってしまった
部分です。6月25日の第9帖「葵」の全文訳(14)の続きとなります。

オンラインでの例会を開始する前に、ここだけを書いておくべきでした
が、忘れておりました。今日、オンラインで、その先を読みましたので、
こちらを先に書いておきます(113頁・1行目~114頁・11行目まで)。
2月例会分の最後の1/4となります。
(頁・行数は、「新潮日本古典集成 源氏物語二」による)

二条院では部屋部屋を掃き清めて、男も女も源氏の君のお帰りをお待ち
申し上げておりました。上席の女房たちも皆参上して、我も我もと着飾り、
化粧をしているのを見るにつけても、あの左大臣家で、ずらりとい並び、
悲しみに沈んでいた女房たちの様子が、源氏の君にはしみじみと思い
出されるのでありました。装束をお召換えになって、若紫の居る西の対へ
とお出でになりました。

西の対では、冬支度に変わったお部屋の飾りつけが、明るくくっきりと
見えて、美しい若女房や女童の身なりや姿が見苦しくなく整えてあって、
少納言の乳母の采配ぶりは、行き届かないところがなく、奥ゆかしいと、
源氏の君はご覧になりました。
 
若紫は、とても可愛らしく着飾っていらっしゃいます。源氏の君が、
「長い間お目にかからないうちに、すっかり大人っぽくなられましたね」と
言って、小さな御几帳を引き上げてご覧になると、横を向いて恥じらって
おられる若紫のご様子は、何一つ不足なところはありません。火影に
浮かぶ横顔、頭の形など、ただもう、あの思いの限りを尽くしてお慕い
申し上げているお方にそっくりに成長して行くことであるよ、とご覧になる
と、源氏の君はとても嬉しくお思いでした。

近くにお寄りになって、会えなくて気掛かりだった時のことをあれこれ
申し上げなさって、「留守中のお話をゆっくりと申し上げたいが、喪に
服していた場所から帰って来たばかりで、縁起も良くないと思われます
ので、しばらく他で休息してから、また参りましょう。これからはいつでも
お会い申せましょうから、もう私に飽きてしまって、嫌だとまでお思いに
なるかもしれない」と、こまやかにお話申されるのを、少納言の乳母は
嬉しく聞きながらも、やはり不安に思い申し上げています。高貴な秘密の
お通い所も沢山おありのようだから、また面倒な権門の姫君が、葵の上
に代わって出て来られるかもしれない、と思っているのは、憎らしい気の
回しようですこと。
 
源氏の君はご自分のお部屋にお出でになって、中将の君という女房に、
おみ足などを気楽に揉ませて、おやすみになりました。翌朝、若君(夕霧)
のもとに、お手紙を遣わされました。しみじみとしたお返事をご覧になるに
つけても、限りなく悲しいことばかりが書かれております。源氏の君は、
たいそう所在なく、物思いに耽りがちですが、ちょっとしたお出歩きも億劫に
お思いになられて、女性のもとを訪れる気にもなれずにいらっしゃいました。


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