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「香炉峯の雪」の段

2021年3月19日(金) オンライン『枕草子』(第8回 通算第49回)

21日で首都圏の一都三県に出されていた緊急事態宣言も解除
されることとなりました。ただ、日々の感染者数は横ばい、もしくは
微増といったところで、願わくはこの期間中に、確実に東京都でも
2桁位まで収束していて欲しかったのですが、無理でしたね。

オンラインでの『枕草子』の講読会も今日で8回目となり、残り数回、
という所まできました。今回は第275段~第282段迄を読みましたが、
ここでようやくあの有名な「香炉峯の雪」の段(第280段)が出てくる
のです。

この話は、おそらく第1段の「春はあけぼの」と並んで、『枕草子』の
中で最もよく読まれている段ではないかと思います。

雪が高く降り積もった朝、もう日も高くなっているのですが、寒いので
御格子が下されたままになっていました。中宮さまは、お庭の雪を
ご覧になりたいと思われたのでしょう。清少納言に向かって、
「少納言よ、香炉峯の雪、いかならむ」(少納言よ、香炉峯の雪は
どんなふうかしら?)とお尋ねになりました。

そこで清少納言の取った行動は、下級女官に御格子を上げさせて、
自ら掛かっている御簾を巻き上げて見せる、というものでした。

もちろん中宮さまは大満足で、思わずにっこり。周りに控えていた
女房たちからも、「知識としては知っていても、こんな風にとっさに
動くことは思いつかないわ。やっぱり中宮さまにお仕えする人は、
こうでなくっちゃね」と、称賛されたというエピソードです。よくある
作者の自慢話の一つなのですが、中宮さまと清少納言の「阿吽の
呼吸」を伝えるのに最適な話として、『枕草子』の読者の心に深く
刻まれ、語り継がれる結果となったのでありましょう。

中宮さまがおっしゃった「香炉峯の雪」というのは、有名な白楽天
の漢詩の一節「遺愛寺鐘欹枕聴 香炉峰雪撥簾看(遺愛寺の鐘は
枕に欹〈そばだ〉てて聴き 香炉峰の雪は簾を撥〈かか〉げて看る
に拠るものですが、ここで清少納言が、この詩句を口にして答えた
だけなら、単なる知識の披露にとどまってしまい、中宮さまを喜ばせる
には至らなかったでしょう。「動作での体現」、それがこの段の眼目に
なっているのだと思われます。


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